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  SS5□バレンタイン――華音編


 二月十四日、バレンタイン。昨日から男子がよそよそしかったり、急に優しくなったり、チョコレートゲット大作戦。でも女子はそんなことだけでチョコをあげたりしませんよー。
 本命と義理と友チョコと、前もって目星はつけている。余った場合にしかおこぼれはありません。

 そんなあたしもイベントに便乗すべく、前日までに材料や包装を準備していた。当然、手作りである。
 終わりの会が終わったら一人で走って帰宅。友達には帰ってチョコを作るから先に帰ると前もって伝えておいた。
 今日はランドセルをリビングに置いて、あとで部屋に持って上がることにして、チョコレート作りに取り掛かる。
 手順は前もって何度も確認した。
 今年は初挑戦の生チョコ。
 チョコを細かく刻んで、温めた生クリームに溶かす。
 割合は2対1? チョコが200グラムで生クリームが100t。
 溶かして型に流すだけのチョコより意外と簡単でおいしい、生チョコを作ってる。
 チョコをバットに流して冷やす。固まったら適当な大きさに切り分けて、ココアパウダーをまぶして完成。用意しておいた容器に入れて、バレンタイン用の袋に入れる。
 今年は大好きな人にだけ――。
 去年まで毎年渡していたたっくんや拓馬くんには悪いけど、今年は特別だから。
 大好きなお父さんと、千恵さんと、孝幸くんに……。
 想いを込めて、丁寧に作業をしていく。
 作業もいい感じでノってきたところで玄関ドアが開く音に敏感に反応!

「ただいまー」

 孝幸くんは冬場、すぐにこたつに入りに来る。ということはここであたしがチョコレート調理してたら絶対に覗きに来る。ならば先にここへ入ることを阻止せねば!
 ということで、チョコを刻む作業を中断し、リビングドアへダッシュ! ドアに手を掛けようかぐらいのところであたしが先に廊下に出ることに成功した。

「おかえり。でも、キッチンは立ち入り禁止です」
「……こたつに入りたい」
「立ち入り禁止です」
「……寒い」
「立ち入り、禁止!」

 孝幸くんは頬を膨らませ、しぶしぶ二階へと上がっていった。
 私的なことで申し訳ないけど、これで孝幸くんが一階に降りてくることはないはずだから、作業に戻ろう。
 しかし、帰宅タイミングが生クリーム扱う段階じゃなくて良かった。

 生クリームを鍋に入れて火に掛ける。火にかけて大丈夫かなぁ? なんだか不安に思ったので湯銭で温めながら、刻んだチョコレートを入れてヘラで丁寧に混ぜていく。
 最初はどうなるかと思ったけどきれいに混ざって一安心。これをラップを敷いたバットに流して、粗熱が取れたら冷蔵庫へ。
 空いている時間は使った道具のお片付け。そして次の手順の準備。

 固まった……とはいっても柔らかめのチョコを包丁で切り分けて、ひとつひとつをココアパウダーの海へ入れて、断面をコーティングするようにまぶしていく。

 あれ? これはもしかして、外を普通に溶かしただけのチョコに漬けたら外と中で触感が違うチョコができちゃう?
 ん? やっぱり温かいチョコに漬けたら溶けちゃう?
 今度少しだけ試してみようかな。
 と、新しいアイディアを考えながら作業は終了。
 容器に入れて、紙袋に入れる。

「よし、完成!」

 さっきから作業途中にちょこちょこつまみ食いしてるけど、形が悪いものや余りはあたしの今日のおやつ。
 ココアパウダーはほろ苦い、チョコは柔らかくてちょっぴり甘さが控えられた感じ。
 おいしい、今日も大成功!
 さっきイヤな思いさせてしまったから、早く孝幸くんに渡そう。
 喜んでくれるかな? 分からないけど、なぜかあたしの顔は笑ってる。
 階段を駆け上がって、自分の部屋の隣のドアをノックした。

「はーい」

 何だか元気のない返事。
 ドアを開けたら、布団に潜り込んでいた。これは、寒いからだけじゃなく、スネているのかもしれない。年上のはずなのに、こういうところは子供っぽくてかわいい。

「バレンタインだから、チョコレートどうぞ」

 それを合図にお布団亀さんは顔を出し、あたしを見上げ、差し出した紙袋に気付くとようやく布団から出てそれを受け取る。

「ありがとう、カノン」

 はにかんだ笑顔で紙袋を見つめる孝幸くん。

「生まれて初めて貰った。すげー嬉しい。嬉しすぎて感動してる」
「何それ、大袈裟だよー」

 孝幸くんほどの人が貰ったことないだなんて、世の女子は見る目ないなぁ。もしかして、あたしだけが孝幸くんのいいところを知ってるって感じ?
 嬉しくなって頬が緩んでくるから、気付かれる前に一階へ降りる。
 何だかニヤニヤ止まらない。
 顔も熱い。


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2016.03.30 UP