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  飛翔――9




 元旦。
 あんなことがあった後なのに、初詣に行こうって誘いのメールが入ってて驚いたし、嬉しくもあった。
 そのメールに気付いたのは当日十一時。急いで準備して、待ち合わせの天満宮、鳥居前に早めに行って待っていた。
 メールの返信をしてないから、来ないかもしれないけど……待ちたかった。

 そして照山は来た。

 君の姿を見つけた瞬間から、ずっと胸が高鳴っていた。
 抑えていたつもりの君への想いが、また溢れてきた。
 同じ志望大学名を書いた絵馬。
 少し結果の悪いおみくじ。
 初詣客に揉まれてはぐれそうになって、お互いが咄嗟に掴んだ服の裾。
 イカ焼きを買って入った裏路地で、君は困った顔でイカを見てた。ちょっと、タレが多すぎで、滴になって落ちる。
 そんな、隙を見せないでくれ。
 俺は、彼女の耳元の髪をそっとすくっていた。
 くすぐったいのか、肩を竦め、俺と目が合う。
 ダメだ、もう。
 唇を重ねていた。
「あ、秋野……」
「ごめん、これで最後にするから……」
 でも、また唇を重ねた。
 唇が離れても、また重ねて、溢れる想いは止まることなく……。
 何度も何度もキスをした。


 これで、最後、だから……。
 曖昧な最後だ。
 自分の想いのままにキスをして、迷惑な男でごめん。


 俺の胸に鈍い痛みを残した。

 親からも愛情を注がれたことのない自分が、人を愛する資格なんてない。自分は生まれてきてはならなかった人間だ。人を不幸にしかできない。――そればかり繰り返し、自分の想いを殺した。
 ――本当は優しくしたいのに……。
 クリスマスの日からずっと、胸を痛め続けていた。




 冬休みも終わり、いよいよセンター試験。万全の体制で受けるのみ。
 照山と俺、学科は違うけど同じ大学志望している。
 合格して入学が決まったら……あの家から出られる。
 上京して、一人暮らし。その時はちゃんと想いを伝えよう。
 照山に――自分の事も全部、その時なら話せるような気がした。

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2013.07.23 UP