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  飛翔――7




 退院後――担任、校長、理事長らと校長室で話をしていた。
 親には話さないことを条件に、俺は自分の置かれている立場のこと、全てを話した。
 その結果、部活をやめ、特待生ではなくなっても学費を免除できる制度を提案され、特別奨学生となった。
 俺は部活をやめ、その時間をバイトに費やすことにした。
 もちろん、学校の許可を得てある。
 何枚か履歴書を書いた。
 飲食店やコンビニではバイトしたくない。出来る限り同級生には会わないバイト……あ、ガソリンスタンド。
 家の近くから通学路を中心にいろいろなガソリンスタンドに聞いてみたが、なかなかバイトを募集している所がない。
 そろそろガソリンスタンドに絞るのはやめた方がいいと考え出した頃、バイトを募集している店を見つけた。

「すみません、バイト募集のことで……」
 近くにいた店員さんに声を掛けてみた。
「はいはい、あれ、高校生?」
 特に年齢のことが書いてなかったので、高校生はバイトできるか聞いてみた。しかし、
「今日、店長いないから……あ、ちょっと待って」
 その店員は更に店員を捕まえて話す。そして戻ってきて、一人は建物に入った。
「今、聞いてもらうから、ちょっと待ってて」
「はい。わざわざすみません」
 そして明日、面接という約束をした。


 何だか腹が減っていかん。
 病院の点滴といまいち満腹にならない食事を三度食べて退院したが、通常時に口にするものがあまりないのでやはり腹が減ってならない。……仕方ない。あまり食べたくはないが、豆腐三丁、食うか。三丁で百円におつりがある。問題は食べ方だ。最初のうちは何もつけずに食べれた。しかし定番の醤油は飽きた。ほかにあるのか、ぽんずか、味噌か、マヨネーズか、いや、マヨは胃を壊しそうだ。ケチャップ……ありえない。安いだけで、全然だめだ、豆腐。やはり何かしら調理せねばどうにもならない。かいわれも安いが腹の足しにはならないし、たまに辛いし。キュウリまるかじり。トマトにかぶりつき。バナナを貪り食べ、りんごをかじっても歯茎から血は出ませんか? いつもと違う、鉄の味りんご。そういえば、十九円でコロッケ売ってる店、どこだったかな。

 ――キュルルル……。

 空腹のあまり、腹が切ない音を出した。


 面接の時間のことがあったので、何も食べれず昨日行ったガソリンスタンドに向かう。
 店長との面接の結果、バイトとして採用されることになり、一安心。
 バイト頑張って、うまいもの食べるぞ!!


 平日は普通に学校に行って、バイトをする。休みの日は昼から夕方までバイト。
 仕事は楽しかったし、店の人はみんないい人だし、嫌なことも忘れられる。
 たまに食事に誘ってもらったり、特に店長には良くしてもらった。




 そして、高校三度目の春。新しいクラスの張り出された掲示板の前で、照山と出会った。


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2013.07.23 UP