飛翔――4
雄飛はまだ何も語らない。
「汚い手で触るな!」
――断片的に出てくる、
「お前の性癖で那弥が傷つく」
――心の傷。
これまでに言われたことを考えると、雄飛とオレは逆。だけど、似ていると感じることに違いはない。それは何か、まだわからないけど。
オレは、多忙を理由に両親に愛されなかった。二人がくれたのは、大量の金と玩具だけ。金とおもちゃで釣れた同級生は、友達じゃなかった。
中学の頃、たまたま家に帰っていた母が部屋に若い男を連れ込んでいるのを目撃した。
その時、母は言ってた。
父も不倫していて、子供も二人いるって。
父も、ということは、母も……。
子供――オレがいるから、籍はそのままだけど、ここで家族三人が暮らすことは二度とないだろう。それに、子供は数年で親元を離れる。――と。
ただ、仕事が忙しいだけだと思って、家で待っていたのに……父も母にも、もうオレは映ってない。必要ないんだ。
その日、今までにないぐらい泣いた。
心の奥に、黒いものが生まれた。
愛してほしかった思いは、恨みになった。
金をちらつかせたら、だいたいついてくるバカな女たち。オレに抱かれる女が汚らわしい女――母と重なる。壊してやりたかった。
そんなオレを、懲らしめてくれたのが雄飛だった。オマエだけだった。
そして初めて、女の人を好きになれた。
オマエは何を背負ってる、雄飛。
オレにも言えないような、重いものなのか?
ある平穏な昼休み。オレは雄飛に小説を差し出してみた。官能小説、タイトルは『濡れやもめ』。
すごい勢いで叩き落とされた。
みるみる青い顔になり、すごい勢いで走り去り、トイレに駆け込んでた。
雄飛の反応は健全男子の全く逆だ。
しばらくして戻ってきた雄飛は、まだ顔色が悪く、肩で息をしていた。
「俺の、貴重な昼食を返せ……」
全部、出ちゃったらしい。
「出すもの違いだよ」
「……殺されたいのか」
それでなくても悪い目つきが、更に鋭いよ。
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2013.07.23 UP