FILE:1−17 ゲーム機討論会。


 任○堂のファミリーコ○ピュータが発売されてからゲームが流行しだし、ハードやゲームも時代と共に進化してきた。
 今も進化を続けている。
 テレビに繋いで遊ぶものから、持ち運んでどこでもできるもの、通信できたり、交換したり、音楽聴けたり、映像見れたり――ここまで便利に進化してしまったのだから、俺だって欲しくなるわけだ。

 ということで、よく携帯でゲームしている小多朗なら詳しいのではないかと思い、聞いてみた訳です。
 それが……そもそも間違いであったと、気付いた頃には極寒の地に居るような気分になっていた。
 では、そういう状態に至った経緯を、これから振り返りつつ皆様にお伝えしたいと思います。



 それは、今日……部室で一人、窓の外を見ながらぼーっとしていた時のことだった。
 無駄に時間を過ごしていることがどうももったいないと思いだした最近。時間を有効に潰すためには何をすべきか、なんてことを考えていた。
 普段なら文庫本(エロいの)を読んでいたりするのだが、それを読み終えたり、途中で読むのに疲れたり、飽きたりした場合は本当にぼーっとするしかないのだ。
 することないんだよね。捜査の依頼なんてないし。
 で、そんなにヒマなら誰かを呼べばいい、って思うだろ?
 これでも既に居るんだよ、一人。
 携帯でゲームを楽しんでいる人が。
 携帯を充電器と繋いでコンセントにさしてあるけど。
 そちら様はゲームに集中しているので、俺の相手をしてくれるはずもないし、ヤツの性格を考えるとやはりそっとしておくべきだと思うんだ。
 ――触らぬ小多朗にイタズラなし。
 下手にちょっかいだして弄ばれるのは俺だけなんだから。
 だけど、このヒマをどうにかするためには、やはりコイツが必要だったりする。
 ……ある意味賭けだが……やってみようか。
 とりあえず、突拍子もない話題を避けるために、俺はこう言った。
「小多朗っていつも携帯のゲームやってるけど、何のゲームやってんの?」
 たぶん、シューティングであろう、とは日頃から思ってはいるのだが、あえてここから入ることが必要だと思ったのは、少しでも会話を長くし、弄られる時間を少なくしようと思ったからだ。どうなるかは分からないけどね。相手が小多朗だから。
「シューティング」
 ……しばらくして答えてくれた。邪魔するな、とでも言いたげな声で。
 俺は諦めないぞ。このヒマを何とかするために! 体を張ってでも――そんなことに張るな! 小多朗相手だからね〜、そのぐらいの覚悟も必要なのさ。
 って、俺の思考もヒマに合わせてクドいな。
「何の? グラ○ィウスとか、スターソ○ジャーとかあるじゃん?」
 今度はゲーム名を聞いてみる。
「……パロ○ィウス」
 ……あえてパロの方か。さすが小多朗というべきか。
「スターパロ○ャーならウチにあるぞ」
 ……やはりパロか! あれって……何のハードで出たゲームだったかな?
「スタパロって、本体は何だっけ?」
「PCエン○ンだ。今どき持ってるヤツは少ないぞ」
 顔を上げ、ニヤリと笑いながらこちらを見る小多朗は、手の中にある携帯を閉じた。見事に食いついてきた! 俺も心の中でガッツポーズ。
「他にゲーム機持ってる?」
「ああ、各種取り揃えているぞ。割とゲーマーだからな、俺は」
 これでしばらく、退屈せずに済みそうだな。
「ファ○コンとか、スー○ァミとか、プレ○テは……当たり前か」
「初代のゲーム○ーイなんかもあるぞ。……そうだな、今も二機持って歩いているが……」
 携帯でばかりゲームしているから携帯できる本体は持っていないと思ってたのに、持ってるのか。さすが、というべきか、やはり。
 珍しく持ってきているカバンを漁る小多朗。その時、俺の携帯が鳴り出した。
 そして、俺は目を疑った。
「もしもし」
 今のセリフは小多朗が発したものであり、まだ俺の携帯からは着信音が鳴ったままだ。
 小多朗が手に持っているものは、ゲーム○ーイアドバ○スSP。折りたたみのアレだ。それをまるで携帯電話のごとく、開いて耳に当てているのだ。
 ……どうしろというのだ。やっぱり、突っ込まなきゃいけないのか、これは!!
 突っ込み待ちだ。小多朗の視線が俺を捕らえて離さない!!
 着信音も止まってしまった。どうする俺!
「……もしも〜し?」
「こっ、小多朗……くん、それは……携帯じゃないよ?」
 そう言うのが精一杯だった。
「ん〜? はっ! ホントだ! アドバ○スだった!!」
 こういう時は棒読みじゃないんだね……だけど、面白くなかったよ。
「ということで、これが一機目」
 しまった、もう一台出てくるんだな、こういう場合は――って、当たり前だろ!
「次はコレだ!」
 ……え? またアド○ンスじゃん。形が違うタイプだけど。
「任○堂P○P!」
 PS○!? それは無理がある! っていうか、メーカーがケンカしてるよ、そのネタは!!
 どう突っ込めばいいんだ。再び俺の突っ込み待ちじゃないか!!
「……いや、もう、どう突っ込めばいいのか分からない」
 そう正直に言うと、小多朗はつまらなそうな顔をし、舌打ちをした。
「ちっ……つまんねーヤローだな、みの」
 暇つぶしがいつの間にか遊ばれる側になってた!?
「とっておきのネタだったのに、何だよ、その反応は。俺のネタ代……このアド○ンスに掛かった金、六四六〇円返せよ」
「な、何だよそれ! お前が勝手に買ったんだろ? 知るかよ!」
「じゃ、せめて一台俺から買え!」
「売るのかよ! 売りつけるのかよ!」
「アド○ンス二台なんて必要ないだろ。好きな方を俺から買え!」
 ……まぁ、いい方に考えれば、買いに行く手間が省けたというか……そう考えてみる?
「わ、分かったよ、一台買ってやる。いくらだ?」
 俺はポケットからサイフを取り出しながら、小多朗に尋ねた。
「六四六〇円」
「ふざけんな、それは二台買った時の値段だろ! 一台でいいんだ。んー、まぁ、その折りたたみの方で頼むわ」
「はい、こちら、三九八〇円になります。――が、俺が買いに行ったという手数料を加えまして、六四六〇円に……」
「クドい!!」
「……じゃ、せめて四〇〇〇円だな」
 二〇円アップか……。まぁ、キリもいいし、我慢するか。
「よし、四〇〇〇円だな……あ」
 五千円札しかない。
「お釣りはあるか?」
「ちょっと待ってよー。……んー、五千円と諭吉しか持ってない」
 しか、じゃないだろ。諭吉さんも持ってるのか! かーねーもーちー。
「そっかー。じゃ、今度お釣りちょうだいよ? 盗るなよ? 踏み倒すなよ? いいな」
 と言って、俺は五千円札とアド○ンスを交換した。
「まいどあり〜」
 小多朗はとても嬉しそうだった。
 俺も、ようやく暇つぶしアイテムを入手し、ちょっと嬉しかったりした。
 それもつかの間だった。ほんの数秒だったであろう。

「あのさ、ソフト、何か持ってる? 貸してくんない?」
「……持ってねぇよ。ネタ用に買ってきただけで、これからやりたいソフトを物色しようと思ってるぐらいだから」
 ――!! なんだと!! コイツ!!
 貸せ、といわんばかりに出した手が、ものすごく虚しいのは何故?
 小多朗が俺の手を握ってくる。――って、その手に握手をするな! そのために出した手じゃない!!
「じゃ、今から買いに……」
 待ってくれ。今、俺がサイフから出した五千円札は今月の食費とかなんとかじゃないか!
 そのうえ、お釣りをもらっていないだけに、小銭だけが所持金!?
「やっぱり待って、来月にして。もうお金がないんだ!」
「だ〜め〜。返品不可で〜す」
 や、やっぱり、そうなるの!?
「じゃ、俺サマは某ゲーム店に行くので帰りま〜す。さよなら、みのんちゃん。ばいびー」



 ということがあったので、俺は身も心も、サイフの中身もすっかり冷えて、凍えそうなんですよ。

「金、返せぇぇぇええええ!!!」
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