FILE:1−9 言葉遊び?


 今日も相変わらず、部室でのんびりと読書をして時間を潰していた。
 前回同様、読んでいる本の内容はノーコメント。
 しばらくすると、充、小多朗、強固、Win――とTシャツに書いてある――が次々と入ってきて、部室はいつも通り騒がしくなってきた。

「今日は何をしましょうか」
 本来の活動をしっかり無視した発言の強固。
「いや、そういう話に入る前に、ツッコむところがあるだろ!」
 どうやら、充は不満らしい。
「……いや、別に何も」
 Win、お前はいいヤツだ。時にはそっとしておくことが大切だ。
「不満みたいよ、弟くん。みのんちゃんも何か言えば? 言い訳とか」
 不満そうなのは声だけで十分わかる。だからといって言い訳をするつもりは全くない。
「コイツのせいだろ。知るかよ」
 文句を言ってやりたいぐらいなのに。いや、それで良かったとは思うけどね。うん。
 俺は本を読むことに集中したままそう答え、ページをめくった。

「ひゃっ!」

「みのんちゃんは遊んでくれそうにないので、四人で遊ぶなり〜」
「バレーは外でやれよ」
「もうやらん……面白いリアクションが見れたからもう十分」
 オイ!
「やっぱりアレ、気になる!」
 だから気にするな、我が弟よ。
「気にしたらあかん。そっとしといたりーな」
 ……いやいや、ヘンな方言が聞こえた気がするのは気のせいだ。なんせ、小多朗だし。
 っていうか、本を読むのに気が散って仕方がない。
「もうちょっと静かにできない?」
「うむ。ならば今日は、トランプの王道、ジジ抜きをしようじゃないか」
 ……さりげなく無視?
「王道はババ抜きじゃないっスか?」
 俺もそう思う。
「しょうがない。一枚不足してるから、ジジしかできないんだから。それに、ババが回ってきたって大騒ぎもせずに済むだろ?
 そしてジジは俺のみぞ知る……」

 ありがたいような、どうでもいいような……そんなトランプ持ってくるなよ。絶対、自前だな。
 っていうか、持ち主だけにジジカードを唯一知ってるのがちょっとキタナイし、小多朗だから、尚更イヤだな。
「みのんちゃんも文句言わないし、始めますか」
 文句は言わないけど、突っ込みどころ満載だよ、小多朗くん。

 トランプを配り終えたのか、二名から不満の声が漏れた。
「ちょっと、これ、ババ入ってるじゃないっスか!」
「わたしも入ってる!」
 ないと思っていたババが二枚混入していたらしく、手持ちのカードにそれが入っていたWinと強固。それに対し、小多朗は当たり前のように回答をするはずだ。
「二枚入っているのだから気にせず普通に扱うだに。ババだからってそういう扱いするのは、ババに失礼だっちゃ」
 ……言う事におかしな部分はないんだけど、語尾がやはりヘンだ。
 読んでいる本がいいところなのに、全然集中できない。一ページ戻って読み直そう。

「やんw」

 充が急に机を叩き、その手でこちらを指さしてくる。
「やっぱり目障りだ! 消えろ!」
 文章を目で追いながら俺は口を開いて、その場合はどうするのか答えてやった。
「消えてもいいのかな〜? 帰ってから悶絶するほど聞かせるぞ?」
「うぐっ!!」
 何を聞かされるのか気付いた充はそれ以上何も言わなかった。きっと手持ちのカードの中から同じ数字のものを選びだしているのだろう。
 ちくしょう。全然集中して読めん。

 ゲームを開始すると、ババ抜きほど騒がしくないので、ようやく目で追う文章が脳に入り出す。

「キャw」

 何だかものすごく、たまらない気分だ……。
「やっぱりカードの枚数、おかしいっスよ?」
「うん、これも足りないみたい」
「……あれ〜ん、おかしいなぁ。確か、昨日破られたのは一枚だったと思ったのに……。それじゃ、恭子とオマエが負けってことでジジ抜き終了。今度は七並べでもするっぺ」
「あれって、並べるだけだろ?」
「ノンノンノン、甘い。アレは奥が深いのだよ、みっちゃん。最後にババを持ってたら負けになるっち」
「また負けが二人出るってことっスか?」
「いや、出るわけがない……にょろりん」
「え? どうして?」
「足りないカードが二枚あるかもしれないから……だぴょん」
「あ、なるほど」
「じゃ、カード配るぽよ〜ん」
 む、むむむ、集中できんんんん!!
 小多朗、やっぱりおかしい。語尾がヘン! なぜ誰も突っ込まない。その方がよっぽどヘンだ。
 見れば分かる俺の現在状況よりもはるかにおかしい。

「だーりん、同じとこばっか読んで、エッチぃですぅ〜」
 ココに来てからずっと俺の膝の上に座り、読んでいる本を黙って覗き見ていた彼女がようやくまともな声を発した。
「しょうがないだろ、うるさくて集中できないんだから……」
「そんなところ、集中して読まないで」
 マイちゃんの声音が変わった。軽く蔑(さげず)んだ感情が含まれているようにも聞こえ、表情も軽蔑(けいべつ)か呆れか……そんな色が滲み出ている。
 その意見を蔑ろ(ないがしろ)にもできず、彼女だけには蔑視(べっし)されたくないし……。
「すみません、好きなもんで……」
「私も人の事を言える身分じゃなかったわ。……ごめ〜んですぅ〜w」
 謝りながら頭を俺の首辺りにスリスリ。いつものように甘えてくる。それが何だかくすぐったくて、俺は肩をすくめた。

「そこ、熱い!! 絶対に部屋の気温が十度は上がったぞ! よそでやれ!」
 とうとう充がキレたか? 七並べ開催中の机を見事にひっくり返した。
「上がったのは部屋の温度じゃなくて、お前の血圧でっしゃろ?」
 床に散らばったトランプを集める小多朗の冷たい一言。
「オレも甘えられてぇぇぇ!!」
 ……。ナンパしてるわりには一夜限り。特定の彼女ってのがいないもんね、充には。その辺りでは俺が勝った! って気がする現状。思わず口元がつり上がってしまう。
「マイちゃん、甘えられたいって」
「……私、あの人――充――はイヤ」
「い、イヤ!?」
 さりげに――いや、顔を歪ませて相当なショックを受けている様子の充。それでもマイちゃんは続けた。
「だーりん臭がしそうにないし」
 それはどんなニオイですか。
「気持ちよくなさそうだし」
 どこが、どんな風に、そして何のコトなのか具体的に気になります。
「オタクそうだし――」
 確かにオタク要素があるけど、それって同族嫌悪?
「やっぱり、だーりんが一番ですぅ〜w」
 と抱きついてきた。
 そのせいで、ラブラブメーターは振り切れ、スイッチオン!
「今日もハッスルしちゃうよー。大サービスだー」
「いや〜ん、どうしましょ〜w」
 と言いながら、嬉しそうだよマイちゃん。
「明日も朝帰りかよぉぉぉ! オレも朝帰りしてやるぅぅぅ!!」
 泣きそうな顔で署から飛び出した充の運命はいかに! 次回を待て。
 ――というのは嘘だけど。


「みのんちゃん、変わったよね」
「そうだね。見た目ではクールな人だと思ってたけど、かなりの大バカやっちゃうし、意外と普通の人だったんだ……みのんちゃんさん」
「……え? 恭子ちゃん、アレが普通に見えるの? ちょっとどころかかなりヘンだと思うし、欲を丸出しすぎで聞いてるこっちが恥ずかしいって」
「ふっ、お子様が」
「お、お子様だと?」


 何とでも言え。もう俺には何も聞こえない。
「マイちゃん」
 彼女の名前を呼びながら、最近、スベスベで触り心地のいい頬を指の腹で優しく撫でると、マイちゃんも目を細めて気持ちよさそうに受け止める。
 た、たまらん。
「ちゅーしていい?」
「いやん、恥ずかしいですぅ」
「いいじゃん……」
 すっかり二人の世界モードな俺を現実に引き戻したのは彼。
 顔を掴まれて向きをヘンな音がするギリギリ角度の一二〇度強ぐらい――自己判断につき曖昧――変えられたと思ったら、強引に唇を奪われ……ギャー!!
「もふ、もふもふ、へぷっ」
 今、体に電流が走ったような――お願いです。ここだけは解説させないでください。
 うう、長い。首がイタい。
「こたろ……苦い」
 これが大人の味? なんて冗談も虚しい。
 微妙に半泣きの俺。
 絶妙なテクを持っていた小多朗に脱帽。
 今のは奇妙なワンシーン。
 見ていたギャラリーはもちろん唖然。
 俺も魂抜けそうだ。
 だけどこんな状況でなぜ小多朗は真顔なんだ! いや、いつもか。
「稔、お前ヘタクソ」
 そしてダメ押し。おかげでショック倍増。総合ショック得点、一億万点。自己最高記録を軽く更新。当社比、俺基準。


 もう、こんな生活イヤァァァ!!

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