6・鍋 迷子
「すいません、港区に行きたいんですけど、どれに乗ればいいですか?」
駅の窓口にて……。それにしてもすっげーかっこ悪い。
外見がコレだから、尚更。
「港区のどこ?」
「……え?」
「駅もいっぱいあるからねぇ。何線で何駅に行くの? JRじゃなければこの駅は違うよ」
何線って、そこまでちゃんと見てなかった! こっちに来る時は皆の後を付いて行っただけだし、何よりリンダの死角を歩いていたものだからそんなことまで覚えていない。とりあえず、駅名は何だったっけ?
「ええっと……」
めちゃくちゃかっこ悪い。
地元の市じゃJRの在来線しかないし、市内に駅なんて三つしかないんだから……。それに比べて都会は駅だらけで車いらずだ。恐るべし、都会! 便利すぎるぞ、都会!
「はま……」
「浜松町?」
「そうそう、浜松町」
「それなら、ここで武蔵野線に乗って、東京駅で乗り換えてJR京浜東北根岸快速に……」
何だって? 長くて解らないよ。
どうやら顔に出ていたらしい。
「……紙に書いてあげるから、ちょっとまって」
「スミマセン……」
「その調子じゃ、東京駅で迷子になりそうだね」
いつぞや、友達と遊びに行った……、
「大阪駅でも迷子になりました」
「……やっぱり? はい、これね。運賃二九〇円だから」
激安! 地元だったら一区間分ぐらいのキップ代だ。(田舎者)
まあ、言うまでもなく東京駅で迷子になりました。
なんとか無事に浜松町駅に辿りつけたけど、右も左も分からないのでホテルまではタクシーで帰ることにした。
ホテルに戻って一番にフロントへ行って聞いてみたけど、ボランティアサークル一行は誰も帰ってきてないみたい。
直は一体ドコへ行ってしまったのだろう……。
ここに戻ってないってことは、家(アパート)に帰った訳じゃないだろうし。
とりあえず、部屋で待ってたらそのうち帰ってくるだろう。
丁度降りてきたエレベーターに乗り込み、誰も居ない部屋に戻った。