30・鍋 新☆会長・副会長
本日、緊急ミーティングだとかで、収集された、ボランティアサークルの面々。
無意味なマッチョポーズをキメながら、ビシっとイッパツ!
「我ら、無事に卒業&就職決まりました!」
な、なんだとぉぉぉ?!!
「4年だったんですかぁぁぁ?!!」
驚きの余り、大声で叫んでしまった私、真部祐紀。高校の時のアダナは電信柱。(成績表じゃないよ)
「ということで、今日は、新しい会長、アーンド、副会長を決めたいと思う」
無視かよ・・・。まあいいか。・・・いや、でも、剛田さんと細木さんが居なくなるということは・・・マッチョ率、下ネタ率、無意味・無謀率がグ〜ンとダウンしてしまうってことか・・・。
それでは、何の取り得もない幽霊サークルに格下げではないか!
「留年してください!」
「今更ムリだ!」
マッチョ率は、この際どうでもいい。
下ネタは、藤宮に任せるとして(も、掛け持ちだから、ほぼ幽霊部員だし)、下ネタ率は、多分維持できるだろう。
いや、マテ。隠れ下ネタキングの、直紀さまがいるじゃないか!
しかし、私の無謀さだけでは、サークルの無謀率を維持できません。
「直、何とかしてくれ・・・サークル存続の危機だ!」
「なんで危機なんだよ・・・大袈裟な」
頬杖ついて、呆れた顔で私を見つめる、直・・・。
「ということで・・・立候補、もしくは推薦してくれ」
「はいは〜いw」
古賀ちゃんがはりきって手を挙げる。
「古賀」
「は〜い、直さんと祐紀さんが萌えです〜w推薦!」
「・・・燃えの意味が分からないが・・・」
字、間違ってます。
「一番古株なんだから、ふたりに決定っしょ?」
めったに来ない藤宮さえコレか・・・。
って、私と直?冗談!
「ふたりに、賛成の人、拍手!」
パチパチ・・・え?全員一致、即決、現金一括払い?
「ということで、新会長は鎌井直紀、新副会長は真部祐紀に決定しますた」
「今日は、新会長&副会長就任パーテーを開くので、いつもの居酒屋に5時集合!もちろん自腹だ!」
パーテーって、おじいさんみたいな言い方するなよ・・・。
「それでは、解散!新会長と副会長は残れよ。引継ぎするから」
・・・居残りですか・・・。
大体、引き継ぐようなことが、このサークルにあったのか?
「これが、我がサークルの歴史。代々会長が自宅で保存することを義務付けられているからこそ、残っているありがたいモノだ。先の部室棟倒壊で、現物は失われたものの、データは全て、このCD-Rに入っているのだ」
「過去の活動内容から、部員名簿まで、ぎっしりとな」
そう言って、5枚のCD-Rを出された。
「ちなみに、マッキントッシュじゃ見れません」
それはすぐに分かったよ。ラベルに『Win専』と書いてあったから。
「来年度の名簿は、5枚目のCD-Rに書き込んでくれ。名簿や活動内容なんかは、今までのデータを参考にして、好きに作ってくれて構わない。寄付金のことも、忘れず書けよ」
私たちが知らなかったことばかりだ。
このふたりが、本当に居なくなってしまうのだと考えると、少し寂しい気分になってきた。
ただの筋肉かと思っていたけど、知らないところで、ちゃんと会長・副会長の仕事をしてたんだな・・・。
「いつも、どうやってボランティアの仕事、探してたんですか?」
ああそうだ。ボランティアが神髄だった。
「それか。それは・・・」
「インターネットで探して、コレだ〜!!って勝手に決めてた」
な・・・なにぃ?!!
「向こうから応援依頼が来ることもある。そんなもんだ」
何だか恐ろしい回答が返ってきそうな予感はしたが、一応聞いてみた。
「一昨年の48時間テレビは・・・」
「イブニング娘☆目的」
そんな事の為に、私は倒れたのか・・・。orz
「ま、これからのことは、お前たちに任せるから。たまには顔出すようにするからさ」
「分からないことがあったら、電話してくれればいいし」
過去の事はともかく、今はすごくいい先輩に見える。
いいサークルに入ったなと、今初めてそう思えた。
引継ぎを終え、部室を後にする際、新会長&副会長就任パーティ忘れるなよと、念を押された。
イベント後、いつも打ち上げをする居酒屋。
このメンバーで飲むのは、もしかしたら最後かもしれないと考えると、また寂しくなってきた。
期待して入ったサークルだったけど、待ち構えていたのは豪腕マッチョ。
退会を求め、ひたすらもがく私の前に現れた直。
昨日の事のように、記憶が蘇る。
そうだ、私と直を会わせてくれたサークルなんだ。そのサークルを、今度は私たちが作っていくんだね・・・。
「よっしゃー!全員揃った所で、会長、最後の音頭を取らせて頂きます」
皆がビールやジュースを手に取る。
「それでは、剛田さ〜ん、細木さ〜ん、卒業&就職決定おめでとぅ・・・」
「ちょっとまてー!!就任パーティでしょ!」
立ち上がり、私が突っ込むと、剛田さんは今までに見せた事のない優しい笑顔で、私の頭を撫でた。
「ケチケチすんな〜。いいじゃねーの。最後なんだから好きにさせろ!」
最後だなんて、言わないでよ・・・。
「かんぱ〜い!」
私はその場に立ち尽くしてしまった。
居て当たり前の人が居なくなる。いずれは自分も・・・
「祐坊、思い出話でもしようじゃないか〜。姫も来い」
いつも通りの剛田さんと、細木さんの様子に、救われていた。
「そういえば、お前らが入ってすぐに、歓迎会したとき・・・」
そうそう、ステキなウーファー装備してますねって、イビキすごかったな・・・。
「俺ら、姫を掘る気満々だったよな。男だって知らなかったから仕方ないけどさー」
「でも実際は、祐坊のアパートの空き部屋に泊まって、あの時こそチャンスだったのにな〜」
一体何のチャンスですか?
「あの頃と比べたら、祐坊も女らしくなったもんだ」
「ふぇ?」
ビールを飲みながら昔話を聞いていたら、私の話になったので、視線を剛田さんの方に向けた。
「だって、一人称『俺』だったじゃん。ちょっと前から『私』になったなーとか思ってたんだ」
細木さんが、やらしい目で、私の顔を覗き込む。
「その頃ですかぁ?イヤンなことしちゃったのはぁ〜」
うわ、酒くせぇ。違うけど、いちいち説明するようなことでもないし、
「想像と妄想にお任せします・・・」
細木さんは、一時無表情になり、再びエロい顔になる。
「直紀・・・ええ乳してるな・・・」
「祐紀、ダメだよ・・・ああ!!」
細木さんが私の役で、剛田さんが直の役なのだろうか?
細木さんが、剛田さんの胸を揉むようなしぐさをしている。
裏でやれ!
「・・・」
直は赤い顔して、黙々とビールを口に運んでいる。
ボソっと、僕はそんなことされてない。と、マッチョに聞こえないように文句を言っている。
マッチョはまだ演技してるし。
演技・・・?!!
「あめぇよ。その役になりきってこそ、真の演技と言えるんだ!」
と言って、直と私の間に割り込み、直が手に持っていたジョッキを奪い、テーブルに置くと・・・
「なお〜ww」
いきなり押し倒した?!!
直は目が点になっている。
「ね・・・ココがいい?こう触ると感じる?」
と言いながら、おいおい、待たんかい!と言いたくなるような場所をやらしい手つきで触っている。
・・・私、そんなことしないよ・・・。
「ね・・・直・・・」
−ゴス☆
調子に乗りすぎた藤宮は、鈍器で頭を殴られた。
直の手には、先程まで持っていたジョッキ。
「・・・バラすぞ、テメ・・・」
直からは、怒りがにじみ出ている。
「何だよ・・・半だ」
−ゴスン☆
何かを言いかけた藤宮の頭に、再びジョッキ炸裂。
「バラすよ?いいの?」
引きつった笑顔で、もう一度藤宮に忠告。きっと、妹のことを指しているのだろう。
藤宮は、青ざめた笑顔になり、すみません、冗談です。と言って、自分が居た席に戻っていった。
その後も、収拾がつかないほどの大騒ぎ。
私もちょっと調子に乗りすぎたみたいで・・・
気が付くと、直の部屋で寝ていた・・・。
あ・・・あれ?途中の記憶が抜け落ちている。
携帯だけは、いつも通り頭元に置いてあったので、時間を確認する。
AM4:26
一体いつ帰ったんだろう?
服もそのままだ・・・あれ?あれあれあれ?!!
ちょっとおかしなことになってますが・・・。いわゆる、半裸?
しかし、どれだけ記憶をさかのぼっても、居酒屋に居た途中あたりから記憶がない。
「な・・・なにぃ〜」
頭を抱えて、どんなに記憶を引っ張り出そうとしても、出てこない。
考えても仕方ない。明日、直に聞こう・・・。
その前に、ナゼか脱いでいる服を着ると、再び布団に潜り込んだ。
次に目を開けた頃には、外もすっかり明るくなっていた。
隣に寝ているはずの直は・・・頭を抱え、ベッドの隅に座っている。
「はよ、直・・・」
「うわぁぁ!!」
私にいきなり声を掛けられたからだろうか。驚いて飛び退いた。
「どしたの直?」
「いや・・・何でも・・・」
「あのさ・・・昨日、いつ帰ってきたの?」
慌てた顔をしていたのに、その言葉を聞いた途端、きょとんとした表情になった。
「・・・え?覚えてない?」
「居酒屋の途中からさっぱり・・・」
直は複雑な顔になり、頭を抑えた。
「・・・それなら、聞かないほうがいいかも・・・」
そう言われると、余計に気になるんだけど・・・。
「何?教えてよ・・・」
直に詰め寄ると、部屋のドアがバーンと勢いよく開いた。
「え・・・え・・・??」
そこに居たのはマッチョたち。(ドアの大きさの関係上、一人しか見えないが)
・・・なぜウチに?!!
「それなら、我々が説明しよう!」
「やめてくださいー!!」
直が慌てて、マッチョの前でピョンピョンと飛び跳ねたが、蚊でも叩き落すかのように叩き落とされ、沈没。沈黙か?
二人してベッドを占領すると・・・昨日の居酒屋リプレイのように、演技を始める。
「直・・・いいでしょ?」
「やめてよ祐紀・・・隣に剛田さんと細木さんがいるのに・・・」
「でも、もうこんなに・・・ウギュ・・・」
直が、私の役をしていると思われる細木さんの背中に飛び乗り、ヘッドロック。
「やめてよ〜・・・ていうか、聞いてたのかよ!」
細木さんは、布団をバシバシ叩きながら、ギブギブと、苦しそうにもがいている。
下の剛田さんは、攻撃を食らってないので、余裕の顔でハッハッハと笑いながら・・・
「途中まで見てた」
直の顔が、みるみる真っ赤に染まっていった。
「でっ・・・・出ていけぇぇぇぇぇ!!!」
マッチョたちを、さっさと追い出し、玄関にへたり込む直。
・・・私が何をしてしまったかは、よく分かったけど・・・。
何タダで見てるんだよ、クソマッチョがぁぁぁ!!!
直の言うとおり、聞かなきゃ良かった・・・。
それから、マッチョはいつも通り部室に現れた。
いつも通り、指揮してみたり・・・
あれ?引退したんじゃなかったっけ?
結局、マッチョの入社式前日まで、こき使われていた。