4・夏〜愛で地球を救え
「四十八時間テレビのチャリティー募金にご協力お願いします」
声だけが、むなしくハモる。
屋外で募金活動なんて聞いてないぞ! 剛田ぁ!!!
日除けがないからバイトよりハードな気がする。帽子も役割を果たしているのか、いないのか。
マッチョのせいで誰一人、中央入り口を利用しない。募金も集まる訳がない。
「骨折り損のくたびれもうけ……」
「ん? 何か言ったか?」
「いえいえ何も」
地獄耳が……でも、そろそろ本当に幻覚見えそう。景色が揺れているような気が……いや、俺が揺れているのか?
「あの……みんな、あっちの入り口から入っているみたいなんですけど……」
直ちゃんが向こうの入り口を指差して言った。
「……こっち、でっかいのが居るから、怖くて来ないんだよ」
暑さのせいで、制御できず、本音が出る。
「やっぱりそうか。じゃ、俺ら屋内にいるから、後はよろしく」
……あ? ……ああ?!! ちょっと待てぇ!
「あの……」
「んん? 俺らがいるから来ないんだろ? 屁理屈たれるな」
引きつった笑顔で、そう言い捨てた。
……キレてる。
「はーい、がんばりますー」
直ちゃ……!
マッチョに笑顔で手を振っている。二人が見えなくなると、俺の方を向いて、ニヤリと笑った。
「うふふ、邪魔者は去ったわ」
「え?」
もしや、すでに熱ボケしてるとか……。
「とりあえず、一旦休みましょ。本当に倒れそうよ」
「うん……」
なんか、立ちくらみする……重症……だ……。
景色が、グラリと大きく揺れ、同時に痛みと、熱を感じた。
倒れたのか?
すでに、自分の身に何が起こっているのか、理解できていない。
「ちょっと、大丈夫?」
「……は?」
直ちゃんの心配の仕方も、普通じゃない。一体、何がどうなっているのか……。
「そこの影、入って! 私、冷たいもの買ってくるから!」
何か、くるくる回ってるー。
――だめ……触らないで……。
「……つめたい……」
「我慢して!」
頭がボーっとして、未だ何が起きたのかよく分からない。でも、両脇に氷……。これは、熱射病かなんかの応急処置じゃなかったかな?
俺は、熱射病なのか?
「――直?」
「何? 飲み物いる? やっぱり病院行く?」
そんなに、俺の事、心配してくれるの? 本当は――
「……なんでもない……ごめん……」
それしか言えなかった。
「ね、愛で地球は救えると思う?」
「さぁ……でも、俺は救われてるよ……」
「私も、救われてる……」
そう言って、直ちゃんは優しく微笑んでくれた。
それが、真の救いではなかったとしても、今は、救われている……。
今、だけは……。
夢から覚める日が、いつか来る……。