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  SS3□いなくなったリンダ


 小学五年の二学期、他クラスの教室を覗いてある人物の姿を探した。
 一学期に何度か見た気がしたんだけど、いざ話をする気になった頃には全く姿を見なくなってしまい、自分らしくない行動をしていた。
 まさか僕が、特定の人物と話がしたくてその人を探すだなんて……。
 それにしても、本当に彼の姿はどこにも見当たらない。
 学年は四クラス、自分とは違うクラスなので他の三クラスを探せばいいだけ。たったの三教室。なのに見つからないとはどういうことだろう。
 何かあって入院していて長期間休んでいるとか? まさか、彼に限って……でもそういうのは突然だ。
 廊下に立ち尽くす。
 右から5−1、5−2、5−3、5−4。
 四年の頃に同じクラスだった、唯一僕に話しかけてくれていた男がいた。
 最初は面白半分に突っつかれているだけだと思っていたけど、本当は違うみたいで、どうも僕を知りたがっていたように思った。
 なのに、拒絶してしまった。そのまま、学年が上がってクラスが離れた。
 また孤独な一年が始まり、相変わらず誰からも相手にされず憂鬱で……彼の存在がどれだけありがたかったかを知った。
 彼と仲の良かった四年の頃のクラスメイトが僕の前を横切る。とっさに話しかけていた。

「ねぇ、林田くん知らない?」

 その男子は僕が声を掛けてきたことに驚いたような顔をしていたけど、表情を柔らかくして答えてくれた。

「リンダなら、一学期いっぱいで転校したよ」

 ――転校?
 お寺の鐘を突いたような衝撃が頭から足の先まで走った。


 ――お前、家で何かないか?

 彼は何かに気付いてくれた。
 僕がいることを認めてくれていた。

 ――今度遊びに行っていいか?
 ――じゃ、俺んちに遊びに来い!
 ――そうか、すまん……でも、勃起した。

 ちょっと最後のは思い出さなくていい部分。
 クラスの他の子の目も気にせずに、話しかけてくれていたのに……。


「もう、僕に構わないでよ」


 拒絶したのは、僕。
 なのに今更……都合が良すぎる。
 だから、林田くんは何も言わずに転校したんだ。
 もう、僕のことなんか……。




「あ! 白井、鎌井くん泣かした!!」
「違うよ! 泣かしてないし! 勝手に泣き出したんだってば!!」




 失ったものの代償は、かなり大きいと気付いた瞬間。
 でももう、手遅れだ。
 こんなことになるのなら、素直に言いたかった。
 僕に気付いてくれてありがとう、と……。

 彼には一生、もう会えない。きっと会うことなんて、奇跡でも起きなきゃ無理だ。





  □□□

 その『奇跡』は、のちに起こる。

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2016.01.29 UP
2016.02.25 改稿