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  SS2■藤宮家の幽霊


 話が終わったとたん、ぱったり倒れて眠ってしまったカノンの部屋を出て、俺の寝床が準備されているという隣の部屋に入り、布団へ横になって、ふと考えごと。

 そういえば、この家でカノンのお母さん、倒れてて亡くなってたんだよな?
 どこの部屋だろう? キッチンかな、ダイニング? それとも廊下、庭だろうか?
 いろいろな部屋で大人の女性が倒れている場面を想像する。
 ……いや、別にどの部屋でもいいんだけどさ、もしかして、出ないよねこの家。
 ひやーっとして、青白い、ふわーんとした、実態のないアレ。
 いやいやいや、だいたい俺、今までそんなもの見えたことない、だからもしいたって見えるわけがない、そうだ。
 だいたい、いるんだったらカノンとか藤宮さんが真っ先に見てるはずだし知ってるはずじゃないか。その場合なら注意喚起してくれるはず。
 しかしそれはなかった。つまりいないということでいいだろう。
 家で死んだからって、地縛霊になるわけ――

 赤ちゃん産めなかった、無念。
 夫と幼い娘を置いて……。
 産まれたかったよぅ。
 おねぇちゃん……。

 ぐる、ぐる、ぐる……。

 ぎゃぁあああああああああ!!!!!
 これ、絶対残るパターン、いる、絶対いるこの家!!



 ――午後十一時十五分。
 自分の勝手な思い込みですっかり目が冴えてしまい、とても眠れるような状況ではなくなってしまったので一階に降り、まだ電気のついていたリビングに飛び込んだ。
 母さんと藤宮さんはまだ起きていて、話をしながら一緒にビールを飲んでいた。

「この家、出ないよね?」
「え? 幽霊? 出ないよ別に。そんな物件じゃないよここ……あ、それじゃなくてか」
「なに孝幸、そういうの怖いタイプ? 意外ね」
「だってさ、家で倒れてたって聞いたから……」
「ああ、やっぱり詩音のことか。一度も見たことないよ。華音からも聞いたことないし」

 なんだ、やっぱり俺の考えすぎなんだよ。自殺、他殺じゃないんだから、家で死んだからっていちいち残られてたらたまんないって。

「そうなんだ、うん、あ、ごめんなさい、お騒がせしました」
「うん、おやすみ」
「でももし見えたら、教えてね」

 ……え?


  □□□


 それが夢なのか、現実で見てしまったのか、はたまた俺の妄想や空想なのかよく分からないけど、朝起きたらなぜか、脳に刻まれるように残っていた記憶?


 ――清二と、華音のこと、よろしくお願いします。


 という言葉。
 俺がそれを代弁しろということなのか?
 俺ができることは……。

 でも、出ないって、見たことないって言ってたじゃないか。
 朝から一階の和室にある仏壇で手を合わせたのは言うまでもない。


 でも、怨念のこもった「出ていけ」じゃなかっただけいいのか?
 良かったと思おう。


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2015.11.19 UP
2016.01.29 改稿