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  SS1□藤宮華音と林田さん、初めての接触


 それは小学三年の夏、よく晴れた休日だった。
 お父さんに「明日買い物へ行こう」と言われた次の日、車で出かけたデパートで、

「もう来た、ごめん、でも十分じゃ……はい、すみませんでした、すぐ行きます」

 デパートに到着するとお父さんは携帯で誰かと話をして、吹き抜けのある中央催し会場で待ち合わせた誰かと合流した。あたしは聞いてなかったけど。

「今日一緒に買い物してくれる、同じ会社の林田さん」
「こんにちは、よろしくね」

 女性だ。

「で、娘の華音」
「……こんにちは」

 あたしは少し警戒するような感じでその人にあいさつした。
 すぐにぐるぐるっと嫌なものが脳裏をかすめる。
 このひと、お父さんと再婚してあたしのお母さんになるけど、新しく二人の間に子供ができると急に態度が冷たくなって……こういうの、ドラマで見たことある。
 仲良さそうに話しているお父さんと女性。むむむー、大人の話をしているのかー!!

「ホントに変質者と思われて通報されるか試してみましょ! さ、レジへGO!」
「他人事だと思って!!」

 ……ん? 新しい漫才コンビか何か?
 あたしが二人のやり取りにきょとんとしていると、林田さんが耳元で、

「お父さんね、何年か前にカノンちゃんの下着一人で買いに来たら、不審者と間違えられて通報されそうになったんだって。だから私が選んでたりするんだけど、絵柄とか大丈夫? 嫌いなのとかじゃない?」

 と小声で教えてくれて、あたしは首を横に振った。下着の絵柄とかについて、大丈夫って意味で。そういうのそこまで気にしたことがなかったけど、言われてみれば、お父さんが買ってきてたらちょっといやだ。同じ女である林田さんが選んで買ってきてくれたって聞いてよかったぐらい。

「でもさ……カノンちゃんと一緒に来たら、全然大丈夫なのにね。何で一人で買いに行こうなんて思っちゃったかなー、お父さん」

 と、今度はお父さんにも聞こえるように言った。
 するとお父さんは顔を真っ赤にして口をぱくぱく、金魚みたい。顔を両手で隠すようにおさえた。

「あーそうだ、何で気付かなかったかなー」

 そんな感じで、お父さんは優しいけど、どこか抜けている。


  □□□


「すみません、ごめんなさい、休日を無駄に過ごさせて大変申し訳ございませんでした」

 買い物が一通り終わると、三人で喫茶店に入る。好きなものを注文してとお父さんが言ったから、フルーツパフェを初めて頼んだ。お父さんと林田さんはコーヒー。
 注文したものがテーブルに並ぶと、隣に座るお父さんがテーブルに頭を打ち付けそうな勢いで向かい側に座る林田さんに謝り始めたのだった。

「いいのよ別に。家にいてもゴロゴロしてるだけだし、息子は勝手に遊びに行くか、おとなしく家にいるかってぐらいだから。今日も買い物行ってくるって言ったら、いってらしゃい、だってさ」

 息子? なんだ、この人結婚してるんだ。だったらお父さんとは……いや待って、結婚しててもイケナイ関係になって、シュラバとやらに……そのうちあたしの家にヤクザさんみたいなのが乗り込んできて、「ウチのヨメたぶらかしやがって!」ってお父さんが殴られて!!

「あたし、誘拐されちゃう……」
「「誰に!?」」

 大人二人の息の合ったツッコミで我に返る。おおっと、口に出てしまったようだぜぃ。ごまかすように、パフェを一気に食べはじめる。クリームいっぱい、おいしいなぁ。

「でも、連れてきたら良かったのに、息子さん」
「あら、見たかった? でもイケメンすぎて嫉妬するわよ?」

 イケメン、息子……どんな人だろう? テレビに出てる芸能人みたいにカッコイイのかな。その程度の基準。

「華音より一つ年上だから、四年生だよね?」

 とか話してる。一つ上なら……家の裏に住んでいる『たっくん』と同級生になるのか。ほわーんとした感じの優しい男の子。学童が終わってお父さんが帰ってくるまでの時間よくお世話になってる。
 たっくんにはお兄ちゃんもいる。中学生の拓馬(たくま)くん……あたしが小学校に入学した年には六年生で、その頃は一緒に登校してた。
 中学生の男の子も見慣れてはいるし、話もするからからどうってことはないけど……四年生か。
 でもたっくんは基準にはならない。四年生の中でも小さいし、背の高い三年生より小さい。うーん、平均的な四年生とは……。違う、平均的な身長のイケメン四年生……全然想像つかない。


 大人はコーヒーを飲み終わり、あたしもパフェをぺろっと食べ終わり、席を立つ。

「今日は本当にありがとう」
「いえいえ、カノンちゃんにも会えたし、今日は楽しかったわ。じゃ、またね、カノンちゃん。洋服とかリクエストあったらお父さんに遠慮なく言うのよ」
「あ、はい。今日はありがとうございました」

 あたしは大きくお辞儀をした。
 林田さんと別れ、お父さんと歩く。ふと振り返ってみると、林田さんもこちらに振り向いて、優しく微笑みながらこちらに手を振ってくれた。


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2015.11.19 UP
2016.01.29 改稿