TOP > 紅葉−コウヨウ− > ■エピローグ


  ■エピローグ




 高校卒業から二ケ月。
 突然の再会に戸惑った。
 だけどあの時に伝えられなかった言葉を、今なら……。

 もう、あの頃のような弱い自分ではない。
 一人で歩いてる。
 何にも縛られず、一人で歩けるようになったんだ。

 あの時は怯えて触れられなかったけど、今は……。
 その温もりが、本当はずっと……。



 別れの日が訪れた。
 紅葉は大学があるから帰らなければならない。そして、俺は仕事があるからここに残らなければならない。
「長期休みには戻るけど、四年経ったら帰ってくるから、待っててくれる?」
 今にも泣き出しそうな彼女の震える声。一緒にいたい気持ちは同じだった。
「待ってるよ、この街で」
 新幹線の扉が二人を隔てる。
 手を振る紅葉の頬を涙が伝った。
「いってらっしゃい」
 ふと、そうつぶやいた。


 あの日、別の選択肢を選んでいたら、離れることなく一緒にいられたかもしれないのに。
 ……本当にそうかな?


 待とう、ここで彼女を。
 紅葉が帰ってくる日を――。


*  *  *  *  *


 もう、寂しくない。
 秋野が待ってるから。
 その日まで、がんばれる。




 四年後の春、一緒に笑えるように……。





 四年後の春は、一緒にいられるように……。




        ** 終わり **

 NEXT→      その後の紅葉―コウヨウ―

 紅葉−コウヨウ− TOP




2013.07.23 UP