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  その後の紅葉―コウヨウ―




 いろいろ、約束した。

 なにがあっても、毎日連絡すること。
 些細なことでも、何でもないことでも、必ず、電話かメールをする。

 それから、身体のこと。
 一人の問題ではなくなるので、彼女の考えを聞いてみた。
「君は男女の身体の関係をどう思う?」
「どうって……わからないけど、自然に求めあうもの、かな? 愛情表現のひとつとして……って、わかんないよ。人それぞれだろうし……」
 恥ずかしそうに、一生懸命言ってたのが少しおかしく思えた。
「今は側にいるだけで嬉しいのに、それだけじゃ足りなくなるのかな」
 だから身体で? ひとつに、頭痛がする。
 しかし、いつまでもトラウマ云々で決め付けず、ごく一般的な行為。将来、子供をもうけるつもりなら、尚更避けて通れない。

「時間は掛かりそうだけど、ちょっと頑張ってみようかな」

 考えるだけで吐き気がする。だけど、頑張って向き合おうと思った。

 ただ、彼女の上でまね事をするつもりだった。
 なのに耳鳴りはするし、胃はキリキリ痛む。行為に非対応の下半身。
 母親と知らない男の行為が脳裏をかすめる。
 俺の存在……ダメだ、絶対無理だ。

「ダメだよ、考えたら」
 彼女が俺の首に腕を回して抱き着いてきた。
「こうしてたら、自然に、がいいんだよ」
 強く抱きしめてくれる。
「……紅葉」
 俺も彼女の背に手を回し、抱きしめた。
 心の奥が温かくなって、頭痛も耳鳴りもなくなった。気持ちが落ち着いてくる……違う。ドキドキしてる。
「秋野、すごいドキドキしてる」
「……うん」
 恥ずかしいから彼女の首もとに顔を埋めると、すごく熱かった。
「や、やだ、くすぐったい」
 紅葉が身をよじる。反応がおもしろくて、耳や首筋に唇を這わす。
「ダメだってば」
 彼女は俺を押しのけようと必死だ。しばらく反応を楽しんだあと、仕返しを食らった。あれは変な中毒性のある行動だ。


 服の中に手を入れて、素肌に触れた。サラサラしてて、なぜか心地いい。彼女も同じように背中に回していた手を服の中に移動させた。
 そのまま強く抱きしめ合った。


 そのときはこれが限界だった。

 ゴールデンウイークは終わる。

 彼女と、離れ離れになる。

 でも、大丈夫。
 想いは通じてる。

 君が帰ってくるまで、待ってるから。




 ――夏休み。
 真っ先に会いにきた。
 時間の許す限り、一緒にいたけど、やはり別れは辛かった。


 ――冬休み。
 クリスマス、初詣。


 春休み……繰り返す季節。




 そして、彼女と出会った春から六回目の桜の季節。
 大学を卒業し、戻ってきた紅葉と……。




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2013.07.22 UP