TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編5】お兄ちゃんは20歳☆【10】


  【10】


 ――一月八日、土曜日。
 新しい家族が生まれて、あっという間に一週間が過ぎ、愛里と優里が家に帰ってきた。

「……牛?」
「誰がホルスタインですか!! どうせ足元見えないですよー」
 ここ数日のすごい体型の変化に驚いた。

 病室に行ってもいつも寝てた優里だが、かなり大きな声で泣くことに驚いた。  しかも、昼も夜もおかまいなし。さすがに父さんも愛里もお疲れモード。
「……大丈夫かよ」
 朝食の最中寝かけてる父。いつ皿に顔をつっこんでもおかしくない。
「だいじょーぶ、だーいじょーぶ、だぁぃ……」
 これじゃ、接客中に寝ちゃうんじゃないか?
 俺、居てよかったね、この家。

 父さんを送り出す。洗濯干す、干……。
 おっきなパンツ、誰の?
「うわあぁぁぁぁぁああ、やめてぇぇぇ」
 泣きながらこっちに来る愛里。
 お前か。
「……ゴメン」
「うあぁぁぁぁぁあ」
 そんなに泣くなよ。俺、何とか平気だから。あ、もう一枚見慣れないものが……。
「ん、ブラジャー?」
「あうあぁぁぁぁぁあ!」
 ……おもしろい。


「何か手伝えること、ない?」
「え?んー、特には……」
「オムツ変えとか」
「だめぇぇぇ!! 絶対だめぇぇぇ!!」
「そ、そんなに全力で言うなよ……」
「だめなもんはだめぇぇぇ!」
「わ、わかったから、しないから」
 俺は女の敵か。
「どしたの、二人とも」
 亮登が我が物顔で入ってくる。




 そして、成人式の日がやってきた。

 ――一月九日、日曜日。
 洗面所の鏡で最終チェックが終わった頃、相変わらず気合いの入った髪型の亮登が突然現れ、何かを髪に噴きかけた。
「うわ、やめろ! ああっ!!」
 そして背後から俺の髪をいじくりはじめる。
 今日も無難にナチュラルでいこうと思ってたのに、塗られた整髪料を洗ってる時間はない。
「変だ、絶対」
「大丈夫だって」
 肩をポンと叩くと、亮登はスキップしながら洗面所を出ていく。
 追いかけて口論を続ける時間もない。諦めてこのまま行くしかない。
「やだなぁ……」
 できれば会場には咲良との待ち合わせもあるので式開始の三十分前に到着したい。
 髪型については、俺がどうこうしたって余計に変になりそうだし、突拍子もなくおかしなものでもないので、諦める。
 冷蔵庫に磁石で張り付けてある成人式の案内状をポケットに入れ、台所のテーブルに置いといた携帯と財布、家の鍵もポケットに入れていく。忘れ物は、なし、でいいかな。
 リビングでくつろぐ父さんに声を掛ける。
「準備できた……なにやってんの」
 リビングを覗くと、くつろぐどころか亮登と……喧嘩してんの?
 日中、愛里もよくこの部屋にいるので、ベビーベッドも置いてあり、優里が寝ている。構わずその周囲でやりあってる。
「それ以上寄るな、バカのリンプンが落ちる」
「いいじゃん、見せてくれてもー」
 父さんも亮登の髪や服装に気を遣い、必死に顔を押さえ付けている。
「絶対イヤだ。かわいすぎて誘拐するんだろ!」
「誘拐しないから、せめて嫁にちょうだい。十六年後に」
「それだけは、ゆるさぁぁぁん!!」
 優里を巡り(?)父と亮登が、戦っているのか?
 というか、亮登……東京に行ってもモテ期到来がなくてヤケになってる? 父さんの真似で二十歳差狙いなのか、はたまた、本気で愛里が好きだが、どうにもならないと分かって、愛里に似ている優里を圏内にしてしまったのか……いずれにせよ、俺も阻止したい、それだけは。
 それより、
「父さん、亮登、早くしないと時間が……」
「「……あ!」」
 止まる二人。時計を見てびっくり。
「愛里、優里頼む! 車の鍵」
「早く乗れ!」
「いってらっしゃ〜い」
「行ってきます」

 ばたばたと、出発。




 亮登と俺は、父の運転する車で会場へ行き、降ろしてもらう。
「終わったら電話するから」
「はいはい」
 同じように、車から降りてくる新成人。会場付近はスーツ、着物、羽織り袴に身を包む人ばかり。三十分ぐらい前にも関わらず、かなりの人数だ。
 これが全員同じ学年とは……ただただ驚く。
 懐かしい顔ぶれもいくつかあったが、まず咲良の姿を探す。
 確か待ち合わせは……
 背中をトントンと叩かれたので振り向くと、白いフワフワのやつを肩に掛けた……
「咲良?」
「ピンポーン正解」
 いつもと違って髪にゆるやかなウエーブがかかってたり、化粧が目立ったり。
 悪くはないのだが、やはりいつもの咲良の方が……なんでもない。
 桜の花や花びらがちりばめられた、淡い色の袖の長い着物。こっちに戻る前に話してくれていたものだ。花も色も、咲良にふさわしく思う。
「いいね、似合ってるよ」
 って言うと、咲良は照れながら、そうかな、と言った。口元へ上品にあてた左手に光る指輪。こっちまで照れ臭くなる。
「まだまだ初々しいのね、キミたち」
 亮登は、からかっているのか、うらやましいのか、それともねたんでるのか、どれともとれそうな言葉を放ってくる。
「紘貴、少し髪いじったの?」
 咲良も俺の異変(?)にはすぐに気づいた。
「いや、亮登が勝手に……」
 そうでしかないから、正直に。
「いいと思うよ、そういうの。普段からしたらいいのに」
 ……した方が、いいのか?
 照れ隠しに、そうかな? とそっけなく返してしまうが、内心、もう少しオシャレというものをすべきかと考えてしまう。思いきって整髪料でも買ってみるか。

 少し離れた団体に、大きめの男の頭が飛び出てる。回りには見たことある顔。たぶんあの男だ。
 天然バカを演じてきた、天才。成績も本来なら、俺と同等かそれ以上だったはず。爪を隠したとんでもないやつ。最後の最後でそんな印象を植え付けられた、そんな人物――東方天空。
 去年の夏に会って、そう経たない頃に結婚させられました(笑)というメールをやりとりしたきり、久しぶりの再会。
「天空」
 呼んでみると本人だったらしく、手を挙げてきょろきょろ。
「はーい、呼んだ?」
 しばらく辺りを見回し、やっとこちらに気づいてやってきた頃には、ここの三人の腹筋は崩壊していた。
「気付くの遅すぎ」
「しょうがないでしょ、僕は展望台じゃないんだから」
 その発言がツボにはまった亮登は転げそうなほど笑う。
「あけましておめでとう」
 と俺がマジメな顔をして手を差し出して言うと、
「今年もよろしく!」
 と、天空もマジメな顔してその手をがっちり掴んで握手。
 憎めない、いいキャラだ。
 そんな俺たちに、咲良もお腹を抱えて笑っていた。
「天空、俺、お兄ちゃんになったんだ」
 この展開的におもしろおかしく報告したかったのだが、やはり、勉強のできるヤツはどこか生真面目。
「……そうか。うちもついこないだ、生まれたんだ。双子の男の子」


 は?


 今、うちの、とっておきの情報を、軽く流したね。
 なのに、すごいことをさらっと言ったよね。

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2011.12.19 UP