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  ■7−愛里


 携帯は見つからないようにいつもマナーモードにして、ポケットに入れておいた。
 掛けてくれる相手も、掛ける相手も、一人だけ。
 貰ったときから電話帳に登録されていた、裕昭さんの番号とメールアドレス。
 二人だけの……。

 退屈な冬休み、携帯が震えるのを待っていた。
 裕昭さんは休み時間にメールをしてくれることもあって、仕事が終わると必ず電話をくれる。電話が終わるとあたしは家を飛び出して、駅近くのいつも待ち合わせする場所に向かう。
 あしどり軽く、駆ける。
 しかし、今日は今までと違って、途中、呼び止められた。
「あ、吉武」
 いやだ、嫌い、あの三人。
 最近、呼び出されることがなくて油断してた。うかれて三人と会ってしまうなんて考えもしなかった。
 逃げればいいのに、足が動かない。
「吉武、最近あそんでないよね」
 心臓がいやなほど早く動く。恐怖心に体がすくむ。
「せっかくだから遊ぼうよ」
 逃げなきゃ。頭では分かってるけど、動けない。待ち合わせ場所はすぐそこなのに。
 見知らぬ人がどんどん通り過ぎていく。これだけ人がいるのに、誰も助けてくれない、誰も……。
 めまいがする。

 突然、人混みの方に腕を引っ張られてその中に引き込まれた。

 人の流れに揉まれながらもその手はあたしを離さない。
 涙で歪む視界の先、あたしの腕を引いてる人。
 ……裕昭さん。
 涙が溢れてきて、体が震えた。
 この人は、あたしを助けてくれる王子様だ。
 人混みから抜け出し、人気のない建物の影に出ると、あたしは裕昭さんに抱きしめられていた。
 恐怖や緊張が落ち着き、安心感に包まれる。
「ごめんね」
 なぜ謝るのか分からなかったけど、裕昭さんの腕の中は心地好くて、想いが溢れ出してきた。

「……好きです、裕昭さん」

 囁くように呟いたあたしの声は、街のざわめきに消えた。

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2012.01.10 UP