■TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編4】彼女は中学2年生☆【6】
■6−裕昭
車内の時計は午後八時を過ぎたところ。ヒロくんの電話から三十分ぐらいしか経たないうちに帰宅した。
玄関はライトもついていなければ、鍵も閉まっている。いつもの逆。思ってた以上に機嫌悪いかも。
自分が持ってる鍵で開けたが、
――ガチン。
……開かない。チェーンが邪魔してる。
少しだけ開いた玄関から中にいるヒロくんを呼んでみた。
「ヒロくーん、ただいまー。パパですよー」
玄関からまっすぐのところにある台所のドアが開いてヒロくんが玄関に向かって来るが、足音に不機嫌ぐあいが滲み出ている。かなり、よくなさそう。
一度、ドアをひどく閉められ、鍵まで掛けられたが、チェーンは解除して、また台所へと戻ったようだ。
少し間を開けてからドアを開けたが、台所のドアはきっちり閉められていて、暗い玄関。
台所に入ると、食卓には紘貴が作った鶏肉をメインとした料理がたくさん盛られていた。ずいぶん頑張って作ったことぐらい見れば分かる。
それを機嫌の悪そうな顔で頬張り、咀嚼しているヒロくん。僕を睨んで、食べ物を飲み込んでから喋りはじめた。
「おかえり、別に遅くなってもよかったのに。俺が勝手に一緒に食べたかっただけだし」
もし、もっと遅くなって、ヒロくんが寝たあとに帰宅してたら、家に入れなかったのではないだろうか。
「ごめんね、ヒロくん」
「別に、謝られる理由なんてない」
今更外で食べてきたとも言えないし。本当に申し訳なく思う。
「父さんが……」
ヒロくんはうまく伝える言葉がみつからないのか、そのまま黙って、また食べはじめた。
なんとなく、言いたいことはわかる。今まで女の匂いをさせなかった父親が突然女性と付き合いはじめたら戸惑うだろう。紘貴も何も知らない子供じゃない、遅く帰る理由にだって気づく。
「忘年会なら、先に言ってよ。一人で頑張って、バカみたいじゃないか」
「……」
違うよ。忘年会なら酒を飲むじゃないか。車で行かないでしょ。まあ、うまく勘違いしてくれてるので訂正したくないけど。
僕も椅子に座って、鶏のから揚げをひとつつまんで食べた。何かに漬け込んだのか、中まで味がしみててジューシーだし、外はサクサク。料理の腕も僕の負けだな。
「すごくおいしいよ。将来、レストランでもやったら?」
ヒロくんは照れたような困った顔をして、自棄になって食べはじめた。
件名:こんばんは
本文:裕昭です。今日は楽しんでもらえましたか?
うちでは、食卓に大量の料理が並んでたし、息子があまりにも機嫌が悪くて参りました。
また、いつでも連絡してください。
宛先はアイリちゃん。
……メール送信。
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2012.01.10 UP