TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編4】彼女は中学2年生☆【4】


  ■4−裕昭


 彼女は、僕のことが好きになってしまったかもしれない。
 二十一も違う子からの想い。かつて自分が貴子に向けたのと同じ。立場が変わり、初めて分かる貴子の苦悩。
 僕と出会ってしまったことで、アイリちゃんの人生を狂わせているのではないだろうか。
 でも今は彼女から離れる時期ではない。彼女には助けてくれる人が必要で、今はそれが僕。彼女は僕を頼ってる。
 だから今は彼女の側にいよう。

 しかし、近づきすぎてはいけない。戻れなくなってしまう。
 それでも、僕が……。



 午後五時を過ぎると、遠慮がちな電話が掛かってくる。
 約束の場所で待っていると、駆けてくる彼女。
 会うたびに色んなことを話してくれたけど、彼女の家族の話は、聞いていて胸が痛くなった。
「お、お父さんと思っていいからね!」
「え、はい?」
 突然のお父さん発言に、アイリちゃんは戸惑っていた。

 そして、クリスマス。
 今日は珍しく車で出勤し、仕事が終わると愛里ちゃんと少しドライブして、ファミレスで食事をした。
 彼女には携帯電話をプレゼントした。いつも家の電話で掛けてくるし、こっちからは掛けにくく一方的になってるのを少し申し訳なく思ってたから。それに、アイリちゃんが中学校卒業までかんばれるように……。

 ファミレスで食事を終えた頃、僕の携帯が鳴った。ディスプレイを見て顔が強張った。……紘貴からだ。
『いつになったら帰って来るの、今日は一緒に食べようって言ったじゃん!』
 え、一緒、に? そういえば、朝いわれたことを今頃になって思い出し、青くなる。けど、すかさず反撃に出た。
「バカ、クリスマスに遅い帰宅って、簡単な方程式だろ! 状況を読め! ……ちゃんと今日のうちに帰る、八時か九時だ」
 電話を切るとポケットに入れ、ため息をついた。
「息子さん、ですか?」
「うん、小言が多いんだけど、家事やってくれてるから頭が上がらなくて」
「でも、いい関係ですね……いいなぁ、お兄さんか」
 何を想像したかすぐ分かるけど、その方程式だと養子縁組だ。養子縁組も悪くないが、それもそれで面倒なことになりそうだ。
 紘貴の電話からそう経たないうちに、店を出て、アイリちゃんを家に送った。

 その時、ちょうど外出から戻ったアイリちゃんの母親と遭遇することになる。
「どちらさまですか? うちの娘に何か?」
 彼女は少し嫌そうな顔をしている。聞いた話だと普段は干渉しないらしいが、やはり母親として子供を守ろうとする本能までは失われていないように見えた。
 僕は悪い印象を与える前に車から降り、ついつい癖で営業顔の挨拶をした。
「はじめまして、私、アイリさんとお付き合いさせて頂いております、ヨシタケ、と申します。こんな時間まで連れまわしてしまって申し訳ありません」
 ていねいに挨拶したつもりが、アイリちゃんと母親をぽかーんとさせてしまった。長居でボロが出る前に退散しよう。
「ではアイリさん、また……それでは失礼いたします」
 愛里ちゃんの母に頭を下げて車に乗って、走り出す。
 き、緊張した。まさかアイリちゃんの母親に出くわすとは、想定外。

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2012.01.10 UP