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68 最後の試合
春は終わり、夏前のじとじと。梅雨に入った。とにかく、学校の行き帰りが億劫でたまらない。それに、部活もろくにできないし、いつも筋トレ。大志くんは筋トレ得意みたいで、皆の倍のスピードで倍のトレーニングをこなしていた。
この頃になってようやく気付いたことが一つ……吉武は女子が嫌いなのか苦手なのか、話し掛けられてもかなりそっけないく、不快を感じる態度。女子の方も何となく怖いと寄らなくなってた。
決して悪いやつではないのだが……あの、小学生の高学年ぐらいに異性に対する態度が変わることがあるけど、あれの延長でどうにもならなくなった感じか……
「もー杉山しつこいー」
幼なじみのせいか。いつも女子にちょっかいかけて軽くあしらわれて。あんなの見てたら……イヤにもなるわ。
……いや、違う。関係ないじゃん、杉山。
結局、謎は謎のまま。
練習も満足にできないうちに県大会、一回戦の日を迎えた。
フィールドの状態は、連日の雨のせいで芝がべっちゃべちゃ。スライディングをしたらすごいことになりそうだ。
ニ、三年を中心に構成されたチーム、8番の僕はMFで出場。大志くんを筆頭に一年はほとんどがベンチ待機。ああ、ニコニコ笑顔の大志くんから花が出てる。出番はなさそ――ないまま、試合終了。余裕の一回戦突破。
二回戦、三回戦、準々決勝――準決勝。
二年FWの深町と交代で入った大志くんが初めてフィールドに立った。
サッカー歴二ヶ月ちょい。だが、今日の彼は目つきが違った。
パスを受けると相手を軽々と突破していき、あっという間にゴール前。
打ったシュートはキーパーの手に当たるがボールの強さ勝ち。ゴールネットを揺らした。
すごい。
肩が背筋がざわざわしてる。
すごい、天性のプレイヤーだ。後ろから見てて、見とれ憧れる風のような動き。
それが感動的にすごくて、自分はもう敵わないなって心のどこかで認めてしまった。
大志くんの活躍で、この試合は2−0で勝利した。
そして決勝……。
試合開始直前のフィールド。
FWにいる大志くんがアレだ。
こんなときに限ってスイッチが切れていて、誰もが試合が開始されたら切り替わると願っていた。僕もそう。
しかし、いつまで経ってもふにゃり、ふにゃり、ぽわわ〜ん。
今日は、スイッチ壊れてる。故障中!
二十分ほど無駄にして、選手交代。深町、戻りました。
しかしそのまま流れを掴めず、0−0のまま前後半、延長が終わり、PKに。これもこれでかなりプレッシャーがかかる。
結果3−1――負けた。
なのにあまり、悔いはなかった。
今なら、潔くやめれそうだ。
「東方はどうすんの?」
「やっぱ、冬まで残るんですか?」
「いや、やめる」
「え、なんで? お前ほどのサッカーバカが……」
「誰がサッカーバカだ!」
僕は新藤に襲い掛かった。
――で、
「とりあえず、夏休みは自動車学校に通い、」
「字、読んで理解できるのか?」
拳を新藤のこめかみでグリグリグリグリ。
「痛い、痛い!」
どこまで僕をバカだと思ってんだ、こいつは。
こうして、僕の高校サッカーは終わり、次代に引き継がれる。
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2012.04.03 UP