■TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編】彼女は野球部マネージャー☆【67】
67 新入部員
三年、最上級生として迎える一年生。去年とはまた気分が違う。
多分、このグランドの状況を見て驚いた一年も多いことだろう。ま、これまでと違って乱闘はなくなったが。
で、新入部員と初顔合わせとなる今日。学校指定のジャージ姿だからすぐに分かる。
……あれ、あれぇ!?
その中によく知る一名。桜井大志。
ここ、野球部じゃないよ。またぽけっとして間違えちゃったかな?
「桜井大志です。今までは野球やってたのでサッカーはわからないですが、よろしくお願いします!」
間違いじゃないみたい。っていうか、
「何があった、大志くん!!」
肩をつかみ、力任せに揺さぶってみた。
「いやややや、なななんか、きょうみががが」
……!?
「それはそれで姉に殺されはしないか?」
「でも、関係ないですし、その時はその時です」
まあ、そうだな。
しかし、いくら覚醒時はすごい運動神経を発揮してもサッカーは初心者。ルールを知ることやドリブルから。
で、今はぼんやりさんだから、ボールに引っかかってこけたり、突然大志ワールドに入ったり、遠くを見つめてたり。
やる気はどこだ。
しかし、覚醒すると、突然リフティングができたり、ボールをカットしたり、かわしたり。
どういう構造をしているのだろうと、ますます謎は深まるばかり。二、三年の間でも、あなどれないがよくわからない初心者として一目置かれる存在となる。
「しかし、桜井って苗字がアレだな」
「ですよね。思い出しますよね」
と、不思議なことを言ってる。そうか、知らないのか。
「大志くん、卒業した野球部マネージャーの桜井さんの弟だよ」
まるで蛇に睨まれたカエルのようにピタリと止まって僕を見る二、三年部員。中に一人、冷静なキーパ稲村。彼は文化祭で大志くんにやられてる。
「何かでも、全然印象違いますね」
「あの時は受験ストレスで、たぶん」
とにかく、稲村は少し警戒しているようだ。
「で、どういうつもりなの?」
「え、高校でサッカーデビューしてみた」
「何で野球部じゃないの!」
かてきょに来たら、やはり部活のことで喧嘩になってた?
「やってみたくなったから。テレビで試合見て、実際に見に行って、やりたいって思った。ただそれだけ。野球やったってどうせ補欠だし……」
今日はよく喋るな、大志くん。これは、いつまでも言いなりにはならないって姉への宣言か。
「……ま、いいわよ。あたしには関係ないし。天空、大志のこと、頼んだわよ」
あの伊吹が折れた!? 野球以外、まさかサッカーを認めるなんて、ありえな……いや、それは過去の伊吹か。ほんと、変わったな。彼女はどんどん、大人になっていく。僕は置いて行かれてないかな。
ボコン。
……あの、ボールが頭に当たりましたよ?
「……?」
ボールが当たった所を撫でながら辺りをキョロキョロ。ここでようやく、
「……痛い」
おおお、遅いよ大志くん!!
そんなぼんやりした所や容姿のかわいらしさから、三年女子の間で人気になり、
「大志くーんw」
「かわいい、持って帰りたいw」
校内で知らない者はいないと言ってもいいぐらい大志くんは有名になっていた。ま、一部ではあの鬼マネージャーの弟として恐れられてもいたが。
かわいいけど、実は強くてすごいマッチョだよ、彼は。
「すげ、なにこの身体」
「……ほえ?」
部室で着替えてて気付かれてもそんな反応だし。
大志くんの身体を見たやつらは腕相撲を挑み、
「あだだだだ!」
「……にゃー!」
僕を除く全サッカー部員を倒し、腕相撲初代チャンピオンに?
僕は……もう過去に負けてるから、やる気にもならなかった。
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2012.04.03 UP