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  59 試合


 県大会に向けて、練習はますます厳しくなってきた。
 去年の国立で発揮できなかった自分のプレー、今年こそは勝ちたい。まず県大会!

 キーパーは一年の稲村に任され、青木さんはディフェンダー、僕はミッドフィルダーに。ここまでまともに残っていた三年は青木さんだけになっていたので、一、二年が中心のチーム構成だ。
「ポジションはともかく、守れるとこで守って、攻めていけるとこが攻めていこう」

 我が高のディフェンス陣は守りが固く、僕は全く抜けない。が、
「東方は右足ばっか使ってるから、絶対右に来るんだよ」
 な、確かに癖で、すぐ左から抜こうとするが……一年ちょいここでやってるから弱点はバレバレ。去年も青木さんに指摘されつつ、改善しなかった。
「そんなディフェンスじゃ、初戦突破できませんよ!」
 一年のフォワード、田中は、僕が突破できなかったディフェンスの壁をあっさりかわしていた。そうか、僕が下手なのか……。箇所箇所でサボってきてるからな。中学の受験シーズンとか、今年の前半とか。しかも野球に浮気。

 自分のダメっぷりに少々がっかりしてたら、柔道着の男と青木さんが何か話していて、そこに新藤と僕が呼ばれた。
「なんか、土曜の練習試合の助っ人頼みたいって」
「二年が一人、怪我で出られなくなって……」
 学年ごとにチーム作って、他校と団体試合するんだとさ。
「僕ら、サッカー部員ですが」
「それはわかっている。しかし、噂によると、二人は授業でかなり強いと、竹山が」 噂じゃなくて事実。情報提供者の竹山は二年の柔道部員じゃないか。柔道の授業のときにめっちゃ投げられたから忘れない。柔道部員なんだから、シロート相手に本気で投げるな、と言いたかったんだ。
「どちらか一人でいいんだ、練習試合に出てくれるだけで」

「じゃ、新藤で」
「東方のが強いよ」

 ……同時に相手を推す。

「新藤の方が体格が柔道向き」
「東方は手が早いから」

 また同時。しかし、手が早いは人聞きが悪い。素早いに訂正しろ。
 そんな相手プッシュ作戦は平行線。そして、
「じゃんけん」
 青木さんの突然の掛け声に、
「ぽん!」
 反射的に出された、僕のグーと新藤のパー。
「よっしゃー、勝ったぁぁぁ!!」
 新藤は拳を突き上げ喜ぶ。ってことは、僕が出るの?
 柔道着の男が、僕の肩に手を置く。
「今度の土曜、朝八時に柔道場に集合な! 練習しにきてもいいぞ」
 な、何で……。

「いいじゃん、いいじゃん、助け合い」
 陽気にスキップなんてしてる青木氏。それでいいのか!!



 助っ人を頼まれたものの、僕は授業でしか経験がない。なので、サッカー部の活動前に少し柔道部を覗きにいってみた、が、入るのも嫌になるむさ苦しさが、柔道場に充満していた。
 こ、これは……試合当日、ぶっつけ本番でいこう。
「とーぼぉー! いいところに来た」
 見つかった。

 それから、柔道着に着替えさせられ、乱取り。
 鼻息が荒いやつに縦四方固を喰らって、嫌な予感がしたり、胴衣が乱れるたびに変な視線を感じた。
 横四方固がうまくかかった時は嬉しかった、と思ったのはつかの間。やはり、倒すのは女がいい。伊吹探して、ちょっと柔道技かけて倒してみようかな。
「……細いかと思ったら、いい身体してるな」
 ゾワゾワゾワ!! や、やめろ! 伊吹との寝技妄想が掻き消された。


「何だよ。遅れて来たくせに疲れた顔して」
「いえ、少々柔道場に寄ってたもので」
「嫌がってたくせに、やる気満々じゃん」
 いや、出なければならないのなら、それなりのことをしたいだけ。



 で、土曜日。
 先鋒で出た僕は、相手の襟を素早く掴み、足技を――
「一本、それまで」
 今、一瞬、世界がぐるっと、凄いスピードで、回ったと思ったら、背中に激痛だよ。
「あ、あれぇ?」

「いやぁ、見事な一本背負いでしたなぁ、はっはっは」
 午前中はサッカー部がグランドで部活なのに、サボって見に来てた体格のいい人物。
「次にお呼びが掛かった時はお前が出ろよ、新藤」
 くそぅ、身体がアザだらけだ。

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2012.02.24 UP