TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編】彼女は野球部マネージャー☆【52】


  52 それぞれのおもい


 野球部が使用している、グランドの校舎側。野球部員のユニフォームに混じり、帽子を被らずTシャツにジャージという格好でグローブをしている一人の男。つい先日まではサッカー部に所属していた。
 グランドのもう半面、サッカー部が使用している。部員の誰もが、野球部側にいる元サッカー部員を遠目に見ては口々に言う。
「東方、なんか雰囲気変わったよな」
「敵地に一人で飛び込んだら、誰でもあんなになるんじゃない? 負けれないじゃん、野球部には」
「じゃ、なんで野球部に行ったんだよ」
 東方天空のクラスメイトで、唯一本人に聞いた新藤だが、まだその理由に納得できていなかった。
「甲子園に行きたいんだとさ。意味わかんねぇ」
 いらついた声でそう言うと、乱暴にボールを蹴飛ばした。

 試合までそう時間はないのに、天空の離脱で少しチームが乱れていた。



 部活が終わっても、グランドで一人、ボールを投げ続ける天空。
 そんな天空を見つめる二人――青木と伊吹。

「なんでアイツ、あんなに頑張ってんだ?」
「……」
 伊吹は青木の質問に黙ったまま。
「イブキ、そんなに甲子園って大事か?」
「当たり前だ。高校野球の……」
 青木は伊吹の言葉を最後まで聞かず遮る。
「一年の時、甲子園行ってるだろ。そんなにこだわらなくても……」
「アイツと……行った甲子園なんて……」
 伊吹はぐっと拳を握る。思い出したくないのに、重ねてしまう過去。
「でも、試合に出るのも、甲子園で戦うのも、お前じゃない。そんなにこだわって、押し付けるなよ。ついこないだまで楽しくサッカーしてた、野球を知らない奴が、自分失って、とりつかれたように練習して……誰のためだ、あれは」
 伊吹は黙る。自分のせいだとわかっていた。
「大会終わったら、返してもらうからな」
「戻らないと言ったら?」
 青木は自信ありげに言った。
「戻ってくるさ、絶対に」
 青木はその場を離れ、帰っていく。


 ボールを投げつづけている天空。まだコントロールに納得できないでいる。
 そんな、必死になってる大好きな人を見つめることしかできず、伊吹は胸を痛めた。

 NEXT→ 【番外編】彼女は野球部マネージャー☆【53】

 義理の母は16歳☆ TOP




2012.02.24 UP