■TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編1】606日〜お父さんは18歳〜【■好機、逸すべからず】
■好機、逸すべからず
恋に落ちる瞬間なんて、自分にでも分からない。
いつの間にか心に住み着いていて、それに気付いた頃には想っている最中。
あなたは私の心の住人。
歩行者と自転車の交通事故。
職のせいか、それとも自分を守るためなのか、私は彼を心配して何度も見舞った。
そっけなくて、なにも語らず、とにかく私を遠ざけようとする彼の態度。
私が加害者で彼は被害者。
そういう態度をとるのも分かっていた。何度も見ていた。
でも、私には被害者としての彼ではなく、別のものを抱いてしまっていた。
気付かないフリをして、間違いだと決め付けて、一時的なものだと思い込んで、一ヶ月は彼の様子を見に行ったけど、その後は――。
離れたら忘れる。一時的な感情移入。
そうだったらいいのに……。
会わなくなっても、そっけない態度の彼がいつも私の中に居た。
自分の年齢と、彼の年齢のことを考えたら、どうにもならないって分かってる。
どうにかなったとしても、彼の人生を狂わせるわけにはいかない。
二十歳も違うのよ、私たち。
そんなの、ありえないじゃない?
あなたが幸せになることを願って、私は想いを殺していくしかない。
あなたに打ち明けられない想いを秘めて接することが、どれだけ辛かったと思う?
私はただ、老いていくだけだから、せめてあなただけは自分の幸せを掴んで、幸せな時をすごしてくれたら……。
私は幸せにはなれないけど、あなただけは……。
あなたからのあの日の電話、その時の言葉で抑えようと思っていた想いが、再び熱を帯び、抑えられず蘇った。
「話があるんです。会えませんか?」
思わず、期待してしまっていた。
「僕の心を奪った罪で、逮捕します」
まさか、そんなことになっているだなんて、予想もしていなかった。
片思いじゃなかった。両想いだったってこと。
だけど素直に喜べない。
私には彼を幸せにはできない。年齢差という障害。
それを言っても、彼は引くことはなかった。
こんな私に真の愛を示してくれた。
それがどんなに嬉しかったと思う?
そしてどんなに不安だったと思う?
今までにない喜びと同時に、申し訳なさでいっぱいになった。
私にさえで出会わなければ、あなたは普通の恋愛ができたのに。
結果的に私は幸せになれるけど、あの事故があなたの人生を狂わせてしまったのかもしれない。
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2012.02.09 UP