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三学期開始! 世にも奇妙な日常とスーパー亮登くんの無謀な暴険?
【3】
「だからここは、さっきの公式を応用してみたら?」
授業も通常通りになった、三学期の一週目、昼休み。教室に戻ると受験勉強に必死なクラスメイトに紛れ、とんでもない光景がそこにはあった。
「ああ、そっか。なるほど……」
亮登にそう助言しているのは、我が校の歩く天然バカ代表取締役、東方天空。
いや待て。いくらなんでも天空が解けるものか……。亮登も切羽詰りすぎちゃって、頼る人間違えてるし。
天空は俺に気付いて笑顔で手を振ってきた。
「……底辺×高さ÷2で、一次関数から三次関数、更には謎のxやらyまでオールマイティにオッケーだ」
解けない、解けない。三角形の面積しか出てこないから。ほら、言わんこっちゃない。相変わらず、小学生レベルなんだから。
「よっしゃ! って、ええ!? の三乗」
三乗したくなる気持ちは分かるが、亮登、鵜呑みにするなよ〜。
さて、俺は――相変わらず、レシピっぽいものを書くのに専念していて、勉強をほとんどやっていないという受験生によくある現実逃避期間だったりする。
まぁ、した方がいいとは思うけど、このノートを全部埋めなきゃ気が済まないし、全く受験勉強をしていないというわけでもないんだから……大丈夫だと思う。
今までだって、真剣に予習復習なんてやったことないし……。ちょこっと、テスト前とか確認でしてたぐらい。
って、学校の定期考査とは違うんだぞ。大丈夫か? でもノートが、しかし受験が――以下略。同じ事の繰り返しだから。
分かってはいるんだ。今更叩き込むほどでもない。習ったことは一通り分かってるし覚えてる。
亮登の場合は短期間での叩き込みの最中。使用済みは即消去。だけどどうして天空を選んだものか……。ホントに。
「三角形の各角度は足したら一八〇度にしかならないんだぞ」
ちなみに四角形は三六〇度――って、やっぱ小学生の問題じゃん!
亮登――せめて俺んとこに聞きに来い。他でもいい。とりあえず、天空はオススメしない。
これは……不合格確定したようなものかもしれない。
良かったな、センターがマークシートで。多少は運でどうにかできるぞ。
たぶん。
三割ぐらいで。
なんとなく。
咲良が書いてくれたメニューリストはとても役に立った。
で、受験勉強さえもしてない俺は、黙々と料理のことをノートに書き記している。
学校にいるときのヒマな時間や、家にいてもすることがない時間を使って。普通なら受験勉強に当てる時間を、それを書くことに当てていた。
確かにまだ時間はある。絶対にやらなきゃならないことでもない。卒業式が終わってしばらくはのんびりできそうなのに、肝心なこの時期にしているのは……思い付きのせいか、それが咲良の言葉だったからか、よく分からない。
肩に力入れすぎて受験に望むのはよくないぞー、って……言い訳か。
少しはやっとかないとな、受験勉強の方も。せっかく行きたいところが決まったというのに、もしものことがあったら意味がない。
料理ノートをキリのいいところまで書いて、本来すべき受験勉強に戻ることにした。
――のだが、
「紘貴、勉強教えてくれ!!」
ノックもせずドアをドカーンと開けて入室してきたのは亮登だった。
今頃になって、というか、お前にしては早いな、とか、ようやく受験生らしくなってきたな、なんて思ったりもする。まぁ、これで二度目。高校受験以来ではあるけど。
「ああ、いいけど。今から丁度始めようと思ってたから」
とりあえず、基礎ができてない分、メチャクチャというか、分からなくて当然。
しかし今はスーパー亮登くんモードなので、記憶力、応用力がものすごくいいので、飲み込みは早い。異常なぐらい。超人と呼びたくなるぐらいに。
「よし、次……これ」
「えっと、これは……」
俺の方が考えるのに時間が掛かってる気がする。
それだけの能力があるなら、普通にやっときゃ今頃になって困ることないのに……。相変わらず、日々の努力とか積み重ねというものがキライなヤツだ。
しかし、一気に記憶して、用がなくなるとさっさと忘れるというのもなぁ……教えてるこっちも無駄に思えなくもない。
「あの、そろそろ夕飯作るから、今日は終了で」
「待ってくれ、あと一問だけ……」
……やっぱ、気持ち悪い。こんなの、亮登じゃない!
亮登をよく知る幼馴染みで、過去に一度この症状を見ていても、気持ち悪いって思ってしまった。
だから当然――センター試験一週間前の土曜日。
「……スギ、やめてよ。何だか……キモい!」
ウチに勉強しに来た、小、中、高と同じ学校の咲良でさえもこの反応だ。
しかもその表情ときたら、俺に向けられたら絶対に立ち直れないぐらいに軽蔑を表していた。
「マジヤバイ。ちょーヤバい。さぶいぼたっちゃうー!!」
あの、あなた、誰ですか? と言いたくなるような咲良。通常モードで営業できないからって別の人になるほど拒絶しなくても……。
「紘貴、これ、答えあってる?」
「ん、ああ……えっと……」
そんな咲良を気にもせず、亮登が解答を求めてきたので、ノートに書いてある答えをチェックすると……ちゃんと解けてた。
「正解」
「よっしゃ! オレってやっぱ、天才だよね」
自画自賛。いや、こちらから言わせてもらえば、天災でしかないんだけど。
「スギ……何の問題解いたの?」
恐る恐る聞く咲良に対し、余裕の亮登。
「正弦定理」
びっくりだろ? 一次関数もめんどくさがって解こうとしないヤツだぞ、こいつ。
「……いやぁぁあああ!!!」
そりゃぁもぅ、一人の女子高生の精神を破壊できそうなぐらいの……って、待て!
咲良、戻って来い! 現実逃避してんじゃねぇ! これは……信じたくなくても現実だ!
試験前にその壊れっぷりは……さすがにマズいものを感じた。
マジ、ヤバくねー?
「亮登、帰ってやらないか? 受験勉強」
「……いいじゃん。黙ってるから」
「ダメだ。咲良が……壊れそうだから」
「……オレのせい?」
「そうだ。普段、勉強しないお前が、マジメに勉強していて、普通に問題が解けるというありえない現実が、不自然で異常で環境を汚染しているんだ」
「……じゃ、咲良がいないときにまた来る」
そうしてくれ。
「スギが正弦定理なんて……ありえないっ!!」
もしもし、咲良さーん。かむばーっく!!
「せいぜい、繰り上がり、繰り下がりのない、足し算と引き算……一桁のやつが限界なはずよ」
そこまでアホじゃないと思うんだけど。
そういえば、亮登は足し算と引き算の繰り上がり、繰り下がりがなかなか理解できず、メチャクチャだったよな……。掛け算では、持ち前の記憶力でみんなを驚かせていたが。
「じゃぁ、咲良が帰ったらメールでもして」
「ああ」
ノートや問題集を片付けて、家へ帰ろうとする亮登に突然、咲良は!!
「スギ、18+9は?」
今の亮登なら、簡単に解けるだろ、それ。
「……はち、きゅ……」
あ、指折り数えてる!!
「じゅ……17!」
亮登、自信満々の解答。だけど、繰り上がってねぇ!! むしろ足し算なのに減ってる。というか、8+9しかやってないじゃん! 10を忘れてるぞ!
「ふふっ、やっぱりスギは所詮、スギだったわね」
怪しげな笑みを浮かべて勝ち誇る咲良。
だから、今のあなたはどこの誰ですか!
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2008.07.11 UP
2009.07.30 改稿
2011.11.21 改稿