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三学期開始! 世にも奇妙な日常とスーパー亮登くんの無謀な暴険?
【2】
――カレー
【材料】
・肉(牛肉、豚肉、鶏肉、ミンチでも可)
・たまねぎ
・じゃがいも
・にんじん
・カレールー
好みに応じて、他の野菜を入れてもいい。
【作り方】
材料を好みの大きさに切る。
それを火の通りにくいものから炒める。
分量の水を入れて煮る。
ルーを入れる。
作り方はカレールーの箱にも書いてある。
シチュー、ハヤシラシスもだいたい同じ手順。
こんなものか、カレーの作り方。
思いつきではあるが、ノートに料理のレシピらしきものを書き出していた。あえて二ページ目から。
あ、そうだ。焼き魚はグリルに水を入れないといけないから……注意書きとして、一ページ目に書いておこう。
他に簡単料理は……。
と、そんなことに熱中していたが、ある程度書いたら何も出てこなくなってしまい、完全に詰まってしまった。
「おはよ。何してるの? 朝から勉強?」
咲良が声を掛けてきて、ここでようやく、クラスの半分ぐらいが登校してきていたことに気付いた。
「あ、おはよう。いや、勉強じゃなくて……」
ここは答えず、ノートを見るよう促した。
「……料理?」
「そ。家を出る前に残しとこうかなって思って」
そうだ。言いだしっぺでもある咲良にも協力してもらおう。
カバンからルーズリーフのファイルを出し、紙を一枚外して咲良に差し出す。
「あのさ、頼みがあるんだけど、適当に料理の名前、書いてくれないかな? 書いてたら詰まっちゃって……」
「うん、いいわよ」
と、咲良はその紙を持ってひらひらと振ってみせた。
……ん、何だか各所から突き刺さるような視線が……。
見回すと、誰もかれもが俺を見て、驚いた顔をしていた。
……そうか。変なんだな。俺が女子と普通に話していることが。
そして更に、教室であっと驚く声が上がる。
「うそ!」
「マジで!?」
「まさか、そんな……」
もしや、亮登あたりが俺と咲良の関係をバラして歩いているのではあるまいな。
なんて心配どころではなかった。
教室に入ってきた亮登は、いつもの亮登ではなかったから。
単語帳を片手に持ち、それをじっと見てはめくっていた。
ど、ど、どーいうことだ、これは。どういう風の吹き回しだ。
これは……明日、地球が滅亡するかもしれない!
あの、ちゃらんぽらん日本代表、杉山亮登が、受験に備えて勉強を始めてしまった模様。
高校受験の時より一週間も早い到来です。
ちゃぽら(略しすぎ?)亮登しか知らない奴は、そりゃもぅ、珍獣でも見るような顔で、声も掛けれずただ唖然、呆然。
マークシートだから感でいくかとも思ったが……ホントにどうしちゃったものか。
俺がクラス代表で話しかけてみよう。
「亮登、急にどうしたんだ?」
「あいあむすたでぃんぐ。どぅのっととーく」.
……今、回答が日本語じゃなかったけど、気のせいだろうか。
今の亮登には、牛乳瓶の底ほどある度のキツいメガネと学ランが似合いそうだ。ガリ勉っぽくしといたら、今の状況から違和は消える。しかし、外見はいつもの亮登。時間と整髪料を無駄に使った髪形で、制服もいつも通り着崩れている。誰もが驚きたくなるのも当然だ。
「英語の勉強をしていることは分かった。でもここは、日本語で答えとけ。気味悪いだけだから」
「失礼だな、ユーは。つーか、どぅのっと話さないって言っただろ」
「いや、だからやめてくれ。お前の口から日本語以外は聞きたくない。短縮してない所は評価しておくが」
「あいどんとしー」
今、短縮したくせに、何で「分からない」と普通に出てきたんだ?
受験前の亮登は、やはり別人だ。関わりたくない。何だか変だし。
「外国人に何か聞かれても、あいどんとしーでかわせ!」
それで覚えてただけか。
「意味分からんが、否定してるよな」
どうやら亮登は意味を知らずに言ったらしい。そういうお前が一番I don't see.
「まいねーむいず、あきとすぎやま。あいらいく……女。女って何だ、『しー』か?」
おいおい、そんなこと言ってたら……クラスメイト全員が、ドン引きだよ〜。
いや、もう、みんなが気持ち悪がってます。
普段、勉強せず、アホなヤツは、急に勉強を始めると気持ち悪がられる。
がられた。
現在進行形。
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2009.07.30 改稿