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三学期開始! 世にも奇妙な日常とスーパー亮登くんの無謀な暴険?
【1】
「いただきます」
「はい、どーぞです」
朝食が出てくるって……変な気分だった。変を超えて奇妙であり、何か起こる前兆ではないかと思わずにはいられないけど、何も起こらないことを願う。
トーストと目玉焼きとウインナーとコーヒー。モーニングセットの定番な気がするけど。
いや、昨日も同じだった。その前も、前も、前も前も。
一月二日からずっと、朝食はコレ。
冬休みもあっという間に終わって、今日から新学期、三学期、高校生活最後の二ケ月のスタートとなる。
センター試験も再来週に控え、油断できない時期になってきた。体調も万全で挑みたいからな、やっぱり。
……ということは、来週あたりから、亮登に火がつき始めるだろう。
アイツは高校受験の時も、試験一週間前になってようやく勉強を始め、ものすごい記憶力を発揮した――が、終わるのと同時に全て忘れ、ちゃらんぽらん男に戻るわけだ。
ウチの高校、市内でも二番目に難しいと言われる学校らしいが、確か受験校決める時に教師に無駄だと言われていたぐらい、亮登が普通に挑んだって足元にも及ばないはずだった。が、亮登は見事に合格しやがった。
まぁ、合格して入学しただけで、授業にはついて行く気がない、やる気なんててんでない、面倒なことは大嫌い。定期テストも毎度凝りもせず赤点かギリギリだし、補習、追試にも多く参加している。
単に、モテたいがために、我が校のブランドが欲しかっただけだと本人は言っていたが、実際にはモテる気配なし。ナンパしてもその場限りの関係で終わり、結局、無駄に終わろうとしている。
……あれ、待てよ。だったら天空は? 確か得意のサッカーで推薦だと本人が言ってたけど……無理がないか、あの学力だと。いや、今更気にするな、って感じだよな。卒業目前なのに。
留年の危機も亮登には過去に二度あったけど、天空の方は聞いたことなかったし……一年の頃から一応名前は知ってたけど、三年で同じクラスになってから今みたいな仲になったんだし、俺が知らないだけかも。
さて、これからの予定。センター試験が終わっても、学年末考査、入試の二次試験――合格発表? ああ、まだまだ油断大敵だ。
それだけじゃなく、ウチの継母さんも……。
「ごちそうさま」
「はい、です!」
「でも……毎日同じだと、飽きる」
「ヒロくん! 愛里さんに失礼だ! 謝りなさい!」
「……やだ。もぅ行ってきます」
「ひ、ヒロくんが反抗期になった。それとも不良に……」
おいおい、大袈裟だろ、それ。
まぁ、反抗期の子供みたいな態度だったような気もしなくもないが、毎朝同じ物が出たら、誰だって文句言いたくなるだろ! 父さんは最愛の妻が作ってくれる朝食だから、そんなことは思わないだろうけど。
愛里の顔を見ないようにして席を立ち、部屋にカバンを取りに行ってから家を出た。
学校へ行くには早すぎるから、自転車には乗らず、押して歩く。
家にいても朝、俺がすることなんてなくなってしまった。朝食は作らなくていいし、片付けもしなくていい。洗濯もずいぶん前から愛里の仕事になってる。
これが普通なはずなんだけど、俺にとっては普通じゃなくて、非日常。慣れたらそうでもないのかもしれないけど……一週間程度ではまだ慣れてこない。
しかし、寒い。
吐き出す息は白いし、手袋してても手には冷えからくる痛みしかない。
そこで目に入ったのはコンビニ。二十四時間、三百六十五日営業しているありがたいところだ。
うむ、ありがたい。品揃えもスバラシイ。しかし価格が痛い。
家を出る時間が早すぎたことだし、ここで温まりつつ時間潰しといこうか。
まぁ、入った途端、コンビニマジックに掛かってしまうわけだが。
買うものが決まっていようが決まってなかろうが、一通り店の中を回ってしまった。
いや、別に買い物に来たんじゃなくて、時間潰しなのに……弁当売り場に真っ先に進んでしまったじゃないか。
……あ、これ、ウマそうだな。買って食って研究すべきか――いやいや、そうじゃなくて!
特に欲しくもないはずなのに、飲み物を買わなきゃいけない気になってきて……いや、無理して買うな。
パン……菓子……カップ麺……文房具……いやいやいや! とりあえず、本の立ち読みで。
でも、立ち読みしたくても、どの雑誌にも特に興味がない。
……横目でちらっと、十八歳未満お断りなコーナーを見てしまう。
買える年齢でいいのかな、俺――って、朝っぱらから何を考えた! だいたい、俺には咲良――くっ! 違う、断じて違う! つーか、こんなもん、堂々と買えるか、バカっ! 恥ずかしくて死ねるわ! 亮登なら平気で買いそうだが……。いや、もういいから、この思考は切断。ちょっきん。
よし、とりあえずゲーム雑誌で……って、意味不明だよ、これ。ゲームに縁がないからなぁ。
料理とか載ってそうなのはいかにも女性向けだから手に取れないし、この立ち読みも苦痛に近かった。
……ん、料理?
そうだ!
ただめくってるだけだったゲーム雑誌をあった場所に戻すと、文具が置いてあるコーナーへ行ってノートを一冊手に取り、そのままレジへ行けばいいものをまたしても店内をぐるっと回ってしまったせいで、もう片方の手には温かい飲み物ことコーヒーを持ってのレジ通過となる。
コンビニである程度時間は潰せたが、学校に到着したのはいつもより十五分も早く、始業三十分前。
学校の敷地内に入って会った人も数人程度だったし、教室にはまだ誰もいない。
自分の席につくと、先ほど買ったばかりのノート、缶コーヒーを出し、カバンから筆記用具を出した。
受験生だったらここで勉強を始めるところだろうが、俺がノートに書き出したことは……。
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2008.07.09 UP
2009.07.30 改稿
2011.11.21 改稿