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  正月だよ、やっぱり全員集合!?


  【2】


 待ち合わせの時間に遅刻すること三十分。ようやく大神宮の鳥居前に到着した。
「……遅い」
「すみません」
 どうせ言い訳にしかならないけど、とりあえず言っておこう。
「実は昨日……」
 昨日からの出来事を。

「スギのお母さん、イケイケな感じだもんね」
 ……だね。
「右へ行け、左に行け、上に行け! みたいな。誰でも振り回しちゃいそう」
「見事にウチの親父が振り回されてたよ」
「あははは。そうなんだ」
 で、俺と亮登はそのとばっちり喰らってたような……。
 人ごみに紛れて賽銭箱まで流れてきた俺と咲良。
 小銭を賽銭箱に投げ入れ、手を合わせてお願いを一つ。
 ――咲良と同じ大学に入れますように。
 確かここに祭られてるのは勉学の神だったはずだし。
 咲良も手を合わせて何かお願いしてるが……やけに長いな。
「よし。おみくじ引いてからお守り買おうよ」
「そうだな」
 恒例でお決まりなことだけど。

「きゃー! 大吉〜」
 大喜びな咲良に対し、小吉な俺。身近な人に振り回される、と書いてある。
 身近――まず家族だな。……今までも十分、振り回されてた気がするが、引き続きなんだろうか。
 勉学も恋愛もいいこと書いてあったから、とりあえず持って帰るとしよう。
 引いたものを一通り読み、財布に仕舞っていると、咲良はせっかくの大吉を木の枝に結ぼうとしてた。
「ちょっと待って。それ、大吉でしょ?」
「うん」
「結んで帰るってことは、運を置いて帰るってことになるよ?」
「え? そうなの?」
 ……余計なうんちく垂れたかな、俺。
「財布とかに入れて、持ち歩いた方がいいって、父さんが言ってたけど。悪いものを引いたときは、利き手とは反対の手で結ぶといいとか……」
「ふぅん……物知りね」
 そ、そうかなぁ……っはははは。
「紘貴のお父さん」
 親父がかよ!
「じゃ、次はお守りね」

 色んな種類のお守りが売ってるところも、長蛇の列。
 ここでもしばらく並んでました。
「間違って安産にしちゃダメよ?」
 そんなにボケてませんよ!
「交通安全ならいい?」
「……んー、それもいるかも」
 お守りって、けっこう高いよね。
 ここまででおよそ千円使ってしまった。
 お年玉に期待しよう。
「ね、お守り、交換しようよ」
「はい?」
 買ったばかりなのに、交換?
「自分が買ったものを持ってるより、交換した方が頑張れそうじゃない?」
「ん、んー。そうかも」
 まだ紙袋に入ったままのお守りを交換した。俺が買ったのは藍色のやつで、咲良が買ったのは赤いやつ。
 ……んー、頑張りたくなるかも。
「よし、絵馬も書こ〜。同じ学校に行けるように、一枚に、ね」
 咲良……色々計算済みなんだね。いや、計画か? とにかく、恐れ入りました。


 ――国立○×大学薬学部 一緒に合格するぞ〜! 吉武紘貴 響咲良

 何だか恥ずかしいぞ。
 連名だぞ!?
 俺は自分の名前しか書いてないけど。

「あ! そういえばさ……」
 咲良が突然声を上げて我に返る俺。
「え? 何?」
「忘れてたわ」
「何を?」
 絵馬を書くために設置されている机に向いていた咲良が正面からこちらに向くと、
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
 と、アタマを下げてきたので、俺も釣られてアタマを下げた。
「あ、こちらこそ、あの、まぁ、よろしく。あけましておめでとう」
 咲良が胸の高さに手を出している。握手、請求ですか。
 その手に向かって俺も手を出し、そっと握手。なんとなーく互いの顔を窺い見て……二人して照れ笑い。

「はーい、カップル誕生の瞬間でーす」
 ――――?!!!!
「げ、亮登!!」
 どこから湧いて出てきたのか、亮登が俺たちの横に立っていた。
「ちょっと、スギ! 何でここに!?」
「えー? 初詣に来ちゃいけないのか〜い? ね、父さん、母さん、おじさん、アイリちゃん、ソーラw」
 亮登の後ろには、見たことある面々が……。亮登の両親と俺の父、継母、そして天空。
 お父さんズ(亮登の父さんと俺の父)は二日酔いらしく、「きもちわりー」と独り言を漏らしながら、額を手で押さえているし顔色が非常に悪い。
 亮登の母さんは缶ビール片手に俺を見てにんまり。ウチの親父や亮登よりタチが悪い表情。さすが亮登の母……と言いたいところだが、この人は限度を超えている。色々と。酒の消費吸収率とか特に。
 天空はどこかで買ってきた焼きイカを食っていて、この中で一番まともそうな愛里は、困った表情。止められなかったことを気にしてか、俺に向かって両手を合わせていた。それは、ごめんなさい、と捉えていいのかな。
「あ〜、響さんちの咲良ちゃんでしょ〜。ひーろきくーん。そーゆーかんけーだったのかー? コノヤロウw」
 喋るな、ヨッパライ!! からかわないでくれ! 亮登母はニタニタと顔を緩めたままジリジリとこちらに寄ってくる。
 ああ、逃げたい。でも逃げたら、愛の逃避行だと言いかねない。それもカンベン。じゃぁ、どうすればいい?
「亮登、邪魔ぁ!」
「ぎゃふ!」
 母親に体当たりされた亮登はぶっ飛んで倒れた。ああ、寒いから痛いだろうな……。
 それから俺と咲良の前に立ち、焦点の合ってない目で交互に俺たちを見たあと……後ろの机に視線を落とした。
 あ、そこには絵馬が!!
「お、これ、な〜んら?」
 だから、絵馬だってば!
 亮登母の手に渡らないよう、俺が先に絵馬を取ったつもりだったが……ヨッパライのくせに動きがかなり素早かった。
 ない! と思い亮登母の姿を追うと、すでに父さんたちの方に向かって歩きながら、読み上げようとしていた。
「え〜、ナニナニ? 国立○×大学薬学部? あら、同じとこに行くの? ふーん」
 何だ……次は何が起こるんだ! 恐ろしくてたまらない。
「掛けてあげるよ。ウチのダンナがねぇ〜上げ「あ゛――――!!!」だから。ネっ」
 突然叫ぶ亮登。何が何だか理解できなかったのは一瞬で、亮登母が絵馬をどこに掛けてくれようとしていたのか判明し、さすがに顔が引きつった。
「……んー」
 亮登父、そう言うのが限界らしい。というか、否定するか回避して欲しかったです。
「結さん……ダメだって。子供に下ネタは」
「うるさい。下げのくせに!」
「いや、だから……っていうか、何を根拠にそんな……ちょっと認めそうになったけど……ああ、頭、痛い」
 せっかく父さんがそこから脱出させてくれるかと思えば、やっぱり亮登母から攻撃されてどうにも言えなくなってる。まぁ、今は二日酔いが一番強いかもしれないけど、亮登母には言った分以上の墓穴掘らされるからな。いい人なんだけど、そういうところは怖い。
 亮登父、あなたの奥さん、暴走しすぎですよ。しっかりどうにかしといてください。
 と言いたいが、それどころじゃないぐらい、具合が悪いらしく、立ってるのがやっとみたい。
 なら来なきゃよかったのに……亮登母がそうさせてくれなかったんだね。
「あーもぅ、母さん! とりあえず賽銭投げて、アル中が治るようにしっかりお祈りしてきて、土下座して」
 と、亮登が絵馬を母の手から取ると、
「誰がアル中じゃ!」
「だはっ!!」
 またしても亮登母、体当たり。その勢いで亮登は飛び、絵馬が手を離れ、空を飛ぶ、飛ぶ、天空が飛ぶ!?
 ナイスキャッチ、天空。
 イカを食べながら絵馬に書いてある文字を読み……首を傾げた。
「……くすり、がくぶ?」
 ブッブー。小学校からやりなおしー。
 そんな天空の手から俺が絵馬を抜き取りまして、
「それじゃ、まぁ……皆さんごゆっくり」
 と一礼。さっさとこの団体から離れたくて、咲良の手を引いて絵馬がたくさん掛かってるところへ行って、それを掛けたらさっさと帰ろうと思ったのだが、
「待て、紘貴!」
 亮登母が叫ぶ! 恥ずかしいからやめろ!
「母さん、もぅ邪魔すんなって!」
 亮登がそれを止める! サンキュー、亮登。お前、イイヤツだよ、今日は。いや、いつも悪ふざけが過ぎるだけなんだけど。
「鳥居の近くにある焼きイカ、ウマいぞ〜」
 天空……確かにウマそうだったから、後で買うことにするわ。

 絵馬を掛けて、手を合わせた。
 ――ごーかくしますよーに。片方だけじゃなくて、二人一緒で。


 それから屋台を見て回り、買い食いしてたら財布の中身が寂しくなった。
 お年玉……。
 俺には親戚とかいるとは思うけど付き合いが全くないし、会ったこともないから、金額面で期待はしてない、できない、するだけ虚しい。

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2008.07.07 UP
2009.07.30 改稿