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  正月だよ、やっぱり全員集合!?


  【1】


「3、2、1――」
「あけまして――」
「あけおめー」
「てめ、略してんじゃねぇ!」
「いーじゃん、いーじゃん。正月早々、怒らない。ことよろー」
「黙れ、子供たち。酒がまずくなる。よし、裕昭、あけましておめでとーの乾杯なのら」
「あの、結さん、飲みすぎ……」
「うるせぇ、黙れ! 歳誤魔化してたくせに!」
「今、関係ないじゃないですか! それに、ここに来た当時の話をここでしないでください」
「何が二十歳だ。十八歳のクソガキじゃねーか」
 それ、俺と亮登のこと……じゃ……ないみたいだね。亮登の母さんはウチの親父をガン見してるから。ものすごく座った目で。
「いや、その件はちゃんと説明したでしょ?」
「……もう、忘れたわ!」
「だったら、その話はここで終わりにしときましょう」
「貴子さぁ――」
「だから、やめてくれ――!!!」
 いつもなら軽く流していく親父も、この時ばかりは亮登母の暴走に取り乱しかけていた。
 それでなくても荒っぽいところのある亮登母。酒で更に荒くなっていた。


 で、なぜこういう状況かと言いますと……明けてしまったので昨日――大晦日に、紅白歌合戦開始と共に我が家へやってきた杉山一家。父、母、亮登の三人。
 亮登の父さんがあまり酒に強くないから面白くないという理由で、亮登母がまずウチに乗り込んできた。それを追うように亮登とその父。
 だが、亮登母を家に連れ戻すどころか、宴会がスタートしてしまったというわけだ。
 一人分の量が半分になってしまった年越しソバも一緒に食べた。
 ウチの父さんもやたら亮登母に酒をすすめられ、仕方なく……ちよびちょび飲んでいて、亮登父も仕方なく飲んでいたが、十一時を過ぎると気分が悪いと言って一人帰っていった。
 愛里は――相変わらず、静かにしていた。いるのか、いないのか、寝てるのか……たまに確認をすると、毎度、眠そうな顔をしていた。
 それも十二時まであと十五分というところでリタイア。
「すみません。もう、限界です」
「あら、そう? ごめんね愛里ちゃん、つき合わせて」
「いえいえ」
 同じ部屋にいただけで、別に付き合ってはいなかったけど。
「おやすみなさい」
「おやすみー」
「じゃ、僕も……」
「待て、裕昭! お前はわたしの相手だろ」
「ええ!? もう、カンベンしてください。同じ顔の息子でお願いします」
「ちょっと待て!」
 そこでなぜ俺が! 未成年者だから、酒には付き合えないよ。
「アイリちゃ〜んw オレが一緒に寝てあげるよ〜」
「待て、亮登! それだけは許さん!!」
 お! 父さんがやけにムキになってるぞ。いつもなら俺が言ってそうなセリフを。
 ここでフラリと立ち上がった亮登母は……亮登の背後にヨタヨタと回り、力いっぱい、殴った。
 いつもの倍、痛そうだ。酔いの勢いって怖いなぁ。
「あんた……ばっかじゃねーの」
「またバカって言った、このヨッパライ母が! そう殴ってバカバカ言うから、バカになっちゃったんじゃないか!」
「バカに付ける、薬はねぇってんだ!」
「うわ! そこまで言う? グレるぞ、スネるぞ、家出するぞ?」
「好きにすればー」
「きぃーっ!! 母さんの、バカーっ!!」
「バカはあんた」
「いいや、母さん」
 ――以下、ほぼ同文のセリフが続く。
 いつもの口論。その隙に、愛里はこっそり退場。
「おやすみなさーい」
 父さんもどさくさに紛れ、四つん這いでこっそり退場を試みたが、
「裕昭、どこ行くの?」
「……いや、あの……別に」
 と、座っていた場所に戻る。なんとも言いようがない顔をして。
 亮登母からは逃れられない運命のようだ。


 そして年も越してしまい、あけましておめでとう、なのです。今年もよろしく。
 人数は減りつつあるが、まだまだ宴会は終わりそうにない。
「ちょっと、トイレ……」
「行くフリして布団に入ったりしたら……襲うからね!」
「……もぅ、冗談に聞こえませんよ……」
 父さんもかなり……キツいらしく、立てばフラフラ、歩けばヨタヨタ、壁に当たりまくってる。その勢いで便器に顔を突っ込まなきゃいいけど……。
「おい、紘貴。ビール持ってこーい」
 まだ、飲むのか、この人。


 それからまた、しばらく父さんは亮登母につき合わされていた。
 同室でテレビを見てるだけの息子ズは、たいして面白くもないのにバカ笑いしまくってるおめでたい芸人が出ている番組をなんとなく見ていた。クッションに抱きついて。
 すると亮登がこっそり耳元でこんなことを言ってきた。
「それはクッションであり、サクラじゃないわよ……ふふふふ」
「おま……バカっ! そんなんじゃ!!」
「じゃ……アイリちゃん? んふふふふ、ぶふっ!」
 俺は持っていたクッションを亮登の顔面に叩きつけてやった。
 その仕返しに、今度は亮登が俺の顔面にクッションを押し付けてきた。
「ちゅーのれんしゅー」
 こんにゃろ。
 更に、更に、更に……何度もムキになってやり返していたら、
「うるさーい! ホコリが立つだろーっくしょぃ! あーもぅ、窓開けろ、窓!」
「ごめんなさい」「すみません」
 亮登母、注意し、クシャミし、怒ったので、俺たちは素早く換気作業。窓開けます! そして俺と亮登はソファーに並んで座り、黙ってテレビを見ることにした。
 それも二時ぐらいまでは覚えているのだが、ふと気付けば隣に座っている亮登がソファーの肘置きにアタマを乗せたまま寝てて、俺もソファーに座ったまま寝てしまったようだ。
 結局、父さんたちが何時まで飲んでたのかは知らないけど……朝、俺が目覚めた時、宴会会場になっていたリビングは、ビールの空き缶が散乱し、ヨッパライが二人倒れていて、ソファーでは息子たちが寝ているという状態になってた。
 こんな部屋の片付けなんてしたくねぇ……そう思った俺は、もう一度目を閉じて寝ることにした。二度寝、最高。冬休み、万歳。

 ――ピリリリ……ピリリリ……

 目覚ましじゃないからね。すみませんね、デフォルトな着信音で。
 しかし誰だよ。正月早々、電話を掛けてくるのは……。
 目を開けず、手探りで携帯を探し当て、ディスプレイを確認せず、とりあえず出てみた。
「はい、もしもし?」
 寝起きのせいで、くぐもった声だけど。
『もしもし? もしかして……寝てたの?』
 声の主は、咲良。その声だけで眠気は一瞬で覚めた。
 二度寝しようなんて考えもぶっ飛び、横になっていた体を瞬時に起こす。そして時計を確認すると、十時を過ぎていて……ここでようやく、約束を思い出した。
「ご、ごめん!! 寝坊した」
 一月一日の午前十時に大神宮へ初詣に行こうって約束してたんだった!
『やっぱり? いつも約束の時間前には来てるから、そうだと思った』
 いや、約束の時間前に行くのは当たり前だと思うんだけど、そういう約束、したことあったか? まだ付き合いだして一週間ぐらいだし。だいたい、咲良がウチに押しかけて……いやいや、来ることが多かった気がしますけど、その一週間。二回ぐらいじゃない? 場所指定で待ち合わせたのって。どちらも無遅刻、時間前集合だったけど。いつもという現し方はまだ早くないか? いや、この際発言をどうこう言ってる場合じゃなくて……。
「すぐ準備して行くから、待っててくれる?」
『紘貴よりいい男にナンパされなければ、待ってるわ』
 何だよそれ!
「ちょっと待て」
『クスクス……冗談よ』
 冗談でも心臓に悪いわ!
 ということで、さっさと準備して大神宮に行かなきゃ……。
 寝ていたソファーから立ち上がろうとすると、手を掴まれた。
 とてつもなくイヤな予感――それが何か、確認する必要もないが、そちらを向いてみると、亮登はまだ眠そうな顔でありながら、俺と目が合うとニヤっと笑った。
 コイツ……聞いてやがったな!?
「どこ行くの? サクラと」
「お前には関係ない」
「ふ〜ん。ま、いってらっしゃい」
 やけにあっさりしてやがるな。怪しい。
「ま、とりあえず……ここのヨッパライ、頼むわ」
「はいはい、了解」
 しかし手を離さない亮登。まだニヤニヤしてやがるので、その手を振り解いて準備開始! 洗面所で顔を洗って、歯を磨き、自室で着替えだ。

 他の誰にも見つからずに済むと思ったら、出る直前に起きてきた愛里に見つかった。
「どこ行くんですか? 正月早々」
「えっと……初詣だ!」
「そうですか……一人で?」
「まさか!」
 あーもぅ! 急いでるのに!
「咲良と、だよ!」
「あ、すみません。いってらっしゃいです」
「おう!」

 自転車をぶっ飛ばして大神宮へ――道はいかにも初詣に行く車で大渋滞。
 自転車は渋滞関係ないと思ってたんだけど、歩行者も多いから大神宮に近づくにつれ、乗ってられなくなり、仕方なく押して歩くことになる。
 道路は来るまで大渋滞。歩道も人で大渋滞。

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2008.07.04 UP
2009.07.30 改稿