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俺にとって初めての……いろいろ
【3】
さすがにこの時期になると、太陽の傾く時間も早い訳で、俺の部屋は夕陽によって赤く染まっていた。
そんな部屋の中、俺は響と二人きりという状況の中にいた。
……えーっと、あの……。
亮登を追い出したまではよかったものの、どーすりゃいいのか、考えてなかった!!
えっとーえっとー……つーか、俺は響と放課後残って、何を言ったんだ!
まず、そこが問題であって……。
「あ、のさ」
「うん?」
響は慌てて俺に目を合わせた。彼女も俺同様、落ち着きがなくなっていて、互いの視線は合ってはいるものの、目が泳いでる。
「放課後……その……何と言うか……」
「うん」
「俺は、えっと……」
ああもぅ! 煮え切らねぇ男だな、俺だけど。
しかも、俺から振っていながら何も言えてないし、聞けてない。
「ねぇ」
「あ、はい」
話しかけられて急に改まってるし。
「倒れる直前に言った言葉……」
え? 何か言ったんだ、やっぱり。
「ホント?」
それが何だか覚えてないんですけど。どう答えればいいのやら。
「それが……ごめん。覚えてなくて……」
正直にそう言って、俺が彼女に何を言ったのか聞くしか手段はない。
「……覚えて、ないんだ」
響は不満そうな表情をしたが、すぐに思いついたよう、ぱっと顔を明るくした。
「じゃぁさ。私の告白に対する答えを聞かせてよ」
「え? あ……」
それって、あの……自分の想いを口にしろってことじゃ……しかも強制っぽい気もする。
ちょっと待て。俺がここで想いを告白しても、フラれる確率は0%なわけじゃん。両想いってやつだから。
そう分かっていながらも、やはり恥ずかしいものは恥ずかしいわけで……。
「えっと……俺は……」
なかなか、言葉にできず、
「うん」
「響のことが……あの……」
自分でもじれったくて、
「す……」
あー! こんちくしょう! 男じゃねーよ、俺!
「す……」
いい加減にしろ! スパっと言ってしまえ!
「す……」
――以降、しばらく以下同文っぽいので省略。長かった。口にするまで。
「好きです」
たった四文字に五分以上要した俺は一体何者ですか。
ようやく言えたのに、満足感も達成感もなく、ただ、自分に失望し、うなだれていた。
「ねぇ」
「……はい」
響の声にやる気なく答えた。少し顔を起こして。
「こんな時期だけど」
「うん」
こんな時期だよね。年末だし、受験前だし、卒業控えてるし。ホントに、こんな時期。
「付き合っても、いいかな?」
え? 告って、オッケーが出た時点で、それは成立するんじゃないの?
いや、聞いてきてるんだから、そこをちゃんと答えないと……。
でもやっぱり恥ずかしくて、上げた顔がまた下がった。
「うん。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。今更だけど」
ホント……今更だよね。何年同じ学校に通ってんだか……。
という感じで、この世に誕生して十八年と五ヶ月弱。
生まれて初めて、彼女というものができた。
それからしばらく、つたない話をして、時期的に暗くなるのも早いので五時に一階へ降りて、ある人物がまだリビングでのんびりしているのを確認し、踏み込んだ。
「でしょ? だからオレは言ってやったのさ」
「亮登、響を送ってやってくんない?」
「ま、マジで!!」
愛里に一方的に話してるだけの亮登に頼んでみたが、寒いからイヤだと言いたげな顔でそう言いやがった。
「しょうがないだろ。一応、俺は病人なんだし、頼めるのはお前しかいないんだから。まさか、薄暗い中、女子を一人で帰らせても平気な冷たい男ではないよな、亮登」
帰れと言った時に帰らなかったお前も悪い。まぁ、居てくれてこっちは助かったけど。
「……後、高くつくからな」
「はいはい。ま、頼むわ」
高くつくとか言っても、どうせたいしたことはないんだから。今までの経験上。
「じゃ、お大事に」
「うん。ありがとな。じゃ、気をつけて」
「またねー、アイリちゃん」
「は、はぁ……」
五時を少し過ぎて、響と亮登はウチを後にした。
その直後から突然、咳が出だして、慌てて薬を飲んだ。
薬が切れるたびに追加して飲んで、効くまで咳込んで……を繰り返し、次の日――冬休み初日の朝。天皇誕生日。
腹部は筋肉痛になっていた。
症状は快方に向かっているものの、完全に咳が止まったわけでもないので、
「げほ……うぉぁ……あたたた」
咳をするたびに鳩尾あたりが強く痛んだ。
くっそー、風邪めぇぇぇ!!!
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2009.07.25 改稿