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俺にとって初めての……いろいろ
【1】
熱い。苦しい。やすらぎ。揺れる。うるさい、うるさい……。
そんなものを感じていたような気がするけど、よく分からない。
目を開けたときに見えたものは、見慣れた天井。俺の部屋。
体が熱い。熱がある。寝巻きにしては着心地が悪い。なんだこれ……。
制服のワイシャツだった。ネクタイはない。
何でこんな格好で……。時間は……三時四十八分? あれ……学校は? どうだったっけ?
まだボーっとしていて頭痛の残るアタマで、思い出そうとした。
なかなか思い出させてくれない。
喉渇いた。飲み物……。
布団から体を起こすと、めまいがしたので目を閉じて額に手を当てた。
あー、だるぃ。
降りるのめんどくせーな。でもなー。
俺は心の中で独り言みたいに漏らしていた。
「吉武、大丈夫?」
という女の声に、手を肩の高さまで上げて返事(?)をした。特に意味はなく、聞いてるよ、程度で。
「熱は? 寝たら下がるって聞いたけど……ちょっとゴメンね」
額に当てていた手を取られ、そこにゴツっと硬めのものが当たった。
ゆっくり目を開くと……ものすごい近距離に人の顔!?
ちょ、まっ……愛里!?
慌てて身を引きかけた時、それは愛里ではないことに気付いた。
――響!?
「え、ま、ちょっ……!!」
座ってる状態で体を引いてもたかがしれてるけど、思いっきり身を引きながら声をだしてみたが、言葉になってない。
「ちょっと、逃げない!」
いやん、大胆です、響さん……。
これ以上逃げれない俺は、響のなすがままに……おでこごっつん。
あー、近い、近い、近い――!!
心臓が限界突破してバクハツしちゃいます〜。
アタマは大混乱、体はオーバーヒートしかけてるとき、ドアが開く音――らしきものが。
「サクラ、ひろ――――っ!!!!!!!!!!!!」
俺は思いっきり後ずさり――と言ってもすぐに壁にぶち当たり、響も真っ赤な顔をしてものすごい勢いで後ろに下がって背中から壁に激突。
更に部屋に入ってきた亮登も、どうやら見ちゃったらしく、声にならない悲鳴をあげつつ後ずさりして壁に当たった。左手を上げた状態で。その方向が階段だったら、一階まで落ちていたことだろう。
そんな感じで、三人が黙って背中から壁に張り付いている状態がしばらく続いた。
各々、冷や汗を垂れ流しながら……。
ちょ、すみません。時間、戻してもらえます? 五分前に。テイク2で、あの……。あ、無理……ですよね。すみません。
「オレというものがありながら、紘貴がサクラと……っっ――――」
何で。つか、泣くな、亮登。嘘泣きだということはバレバレだ。
まぁ、亮登からだいたいの話をだいたい聞いて、学校で倒れたというのは分かったけど……響に自分の気持ちを言ったような、言ってないような、程度まで思い出したが、結局どーなんだよ。
響の目の前で倒れたとかで彼女もウチにいる理由は分かったけど、目が合っても互いについつい視線を逸らしてしまう。
いろいろあって熱は下がったけど……。
「不純だよ!」
「お前にだけは言われたくねぇよ!」
顔はいいくせに手が早いというウワサの亮登くん。お前だけにはそういうの、言われたくない。
つーか、俺は何もしてねぇ! されたんだ!
……さ、され……た?
――回想。
……顔だけが再び熱を出した。
「あ、そうだ。おかゆ作ったんだよ」
「は?」
「スギが言ってたから。風邪をひいたとき、吉武はおかゆを食べるのが習慣だって」
……いつの話だよ、それ。小学生ん時じゃねーの?
「食べる?」
「あ、ああ。うん」
「じゃ、あたためてくるね」
と、響は立ち上がり、部屋を出て階段を降りていった。
「勝手に喋ってんじゃねぇ!」
亮登に向かってそう言うが、
「いいじゃん。アイリちゃんには頼めないっしょ? それに……サクラの手料理の方が、今の紘貴には最高の薬じゃな〜いw」
ニヤニヤと、やらしい笑みを浮かる亮登。
……倒す!
病人だと思って油断してた亮登は――
「あだだだだ、ごめ、ギブ、ギブ!!」
俺に手を捻られ、あっさりとひっくり返されていた。
熱がひいてしまえば、体調は万全に近いんだよ!
俺はうつ伏せに倒れている亮登に乗って、更に手を捻り上げてやった。
「あぎゃ――!!!」
断末魔の叫びが、響きわたった。
死んではないけど。ものの例えだ、断末魔。
よし。スッキリ。
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2008.06.09 UP
2009.07.25 改稿