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  俺+継母+担任=三者懇談


  【3】


 普段なら楽しく話せる担任だけど、こういう場合はちょっと雰囲気が違うので、緊張して気軽に話しづらかったりするんだよな。
 ――コンコン。
「はい」
「失礼しまーす」
「はいどうぞ、座ってください」
 いつもジャージのくせに、今日はビシっとスーツとネクタイ。似合わないったらありゃしない。
「吉武で今日、というか、懇談最後だよね」
「はい」
 でも、他愛ないところから入るのか、担任。スーツ姿でもやはり相変わらずだ。
 が、担任は俺のことよりも、隣に座る愛里ばかりを気にしてるように見える。
「えっと……お義母さん、ですかね」
「はい。そうです」
 ……そういう質問の受け答えを目の前でされると、変な気分だ。
「いやぁ、いいなぁ、若くて。吉武も羨ましい! 自分より若いお義母さん」
「いや、お義母さんというより、厄介な妹ですから」
「や、厄介ですか!?」
 おい、悪い方に捕らえるな! 言い訳開始。
「……いや、そういう厄介じゃなくて、まぁ、あの……手の掛かるかわいい妹というか……」
 何を言ってんだ、俺は!
「ホント、親子というより兄妹みたいだ」
 実の親子ではないので……そういう風に見えるだろうよ。いや、十六歳の義母と十八歳の俺が親子に見えても困るわ。
「つーかこの話、今回の懇談に関係ねーだろ!」
 入室したときの緊張はどこへやら。俺はいつもの調子で担任に食って掛かった。
「あーすまんすまん。まぁ、家庭の事情も把握しておこうかな、と思ってね」
 いや、違うな。単なる好奇心に違いない。
 担任はようやく手元の資料(?)に目を移した。
「えっと、吉武は……大学進学希望。センター試験の申し込みもしてるし、試験は一月の中旬ぐらい……で、まだ一ヶ月半は余裕があるけど、希望する大学や学部が相変わらず空白のままだな。何か、やりたいことはないのか? 将来、就きたい職業とか……」
 それがあるのなら、空白はないだろ。
「特に何も」
「……センター合格しても……って、お前の成績ならまぁ大丈夫だけど、ちゃんと決めとかないと、学校によって出願締め切りや二次試験とか色々、違いがあるからな。今年中には第三希望まで決めておいた方がいいと思うぞ。ね、お義母さん」
 ……何で愛里に。
 愛里は急に話を振られたので、対応しきれず苦笑い。
「家でも話し合ってみてくださいね」
「は、はい……」
 おいおい、愛里を口説き落とすつもりか、担任。その笑顔は別の独身女性へ向けとけ!
 とでも言いたくなるような担任の態度。教師にはやはり向いていないと思った。
 ……教師にはなりたくないな。とりあえず、教育学部は圏外。

 結局、俺の進学には関係ない話ばかり振ってきた担任との懇談は、三十分にも及んだ。


     □□□


 サラリーマンの父は、高卒。
 義理の母は、中卒。
 参考にならん。
 よし、消去法でいこう。
 ここから通える大学は……電車通学も含めてざっと四、五校か。
 農業系はやらないから農大は違うとして……医者にもなる気ないから医学部はありえない。……うわ、六年!?
 遠いと面倒だから、自転車で通える範囲で二校に絞ろう。
 …………??
 意味の分からない学部名に、そっから更に学科。
 あーもぅ、どーやって選べってんだ! あみだくじか、ダーツか、抽選か。
 ――っとその前に、俺は大学に進学して何がしたいんだ?
 亮登よりも行く意味がないことに気付いてしまった。
 だからといって、今更、就職って言ったって……新入社員を募集しているところで適当に就職するのもなぁ……。
 俺は……何がしたいんだろう。
 今まで、家事と学校だけだったし、そういうの、気にもしなかったし、考えてるヒマもなかったというか……。
 言い訳したって仕方ない。
 ずっと、学校に通い、家で家事してればいいという訳じゃなくなってしまうんだ。卒業してしまえば。
 このまま、家事だけしとく?
 ……。愛里がいるから、俺は必要なくなる。
 えっと……じゃ、主夫にでも――って、相手がいなけりゃ成立しねぇ!
 ホントに……俺は、何がしたいんだ!
 まぁ、ちゃんと就職しとかないとな。もしかしたらいつかは結婚とかすることになるだろうし。そんな相手が居ればの話。
 とりあえず、大学を卒業するまでにそれを考えるとして、問題はどこの大学の何学部か……って、結局、堂々巡りじゃねーか。
 ああ、ホントにどうしよう……。
 俺はアタマを抱えて、出ない答えを問い、探した。
 高校受験は……確か、自分の学力レベルに合った学校を先生に勧められて受験した。大学は……それとは違う。
 特に何もしたいことがなく、何となく過ごしてきたしっぺ返しがこんな所でくるなんて、予想もしなかった。

 まだ考える時間はあるけど、そう多くはない。

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2008.05.25 UP
2009.07.24 改稿