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  パニ・ハプ文化祭終了後〜義母さん、事件です!


  【3】


 俺は、この指導者と呼ばれる大人たちのやり方に言葉を失っていた。
 担任は俯いて黙ったまま。俺がやったとされる事件の責任でも取らされるのだろうか。
 そして俺も、やってもないことの責任で自主退学を要求されている。

「どちらも知っている人だと言いましたね? 吉武くんでないというのなら、この写真に写る人物は誰ですか?」
 校長は写真と俺を交互に見ていた。シロートが見て見分けられるわけがない。その写真は辺りが暗くてはっきり写ってない。だからぱっと見て俺だと誰だって勘違いするはずだ。
 でも校長がそれを聞いてきたのは大きなチャンスだと思った。
「それは俺の父と、継母です」

 …………。
 あれ?
 なんだよその、疑いの眼差しは!
 ……ハッ! しまった。継母は余計だったか。益々怪しすぎたか!!
 墓穴掘っただけか!?

「吉武ぇ……もうちっとマシな嘘をつけよ……」
 担任さえも呆れた声を出した。
 信じてもらえてない!?
「いや、嘘じゃないし……あ、その写真がちょっと古いっていうか……」
 ダメじゃん。誰が聞いても、これじゃ言い訳じゃん。
「でも間違いなく、それは三十六さ……あ、いや、十月の誕生日で三十七歳になった実父と十六歳の継母で……」
 ああもぅ、トップシークレットだよ、これは。混乱のあまり、さらっと口に出してる。
「キミのお父さんはテレクラをするあげくに援助交際までするのですか?」
 教頭の冷たい言葉に俺は、
「そ……そうみたいです……」
 魂が抜けそうな声で言った。
 反抗する気ゼロ。さっきまでの勢いはどこへ?
「どうします? 校長。これだけの騒ぎですよ? もし……」
 黙れ、教頭! アンタが話をややこしくしてるように聞こえる!
「本当は彼が――」

「しかしですね、校長――」

「私は退学にすべきだと――」
 黙れっ!!

 響が必死にクラスメイトへ訴えていた。
 ――吉武はそんなことするような人じゃない!

 マジメな顔した亮登が脳裏を過ぎった。
 ――オレサマ、召喚w

 俺は……一人じゃない。退学なんてしない!

 俺の中の何かが弾け飛んだ。
「アンタらは俺を退学にすりゃそれで終わりだろうけど、あらぬウワサを立てられて迷惑してるのはこっちだ。うちの父でも、同じクラスの杉山、東方に聞いてみろよ。杉山の親でもいい」
 俺は大きな声で叫ぶように言って校長と教頭を交互に睨みつけていた。
 腰が引けた教頭が怯えた表情を見せた。
「誰でもいいからここに呼べ――!!」
 俺の勢いに教頭は飛び上がり、担任の後ろに隠れて亮登と天空を呼ぶよう指示した。
 担任はすぐに校長室を出て行き、一分も経たないうちに校内に放送が掛かった。

『三年一組の杉山亮登、東方天空……至急校長室まで』

 それから五分以内にやってきた亮登と天空。
 天空は事情が飲み込めてるのか、飲み込めてないのか分からない表情……というより、初めて入る校長室に興味津々。落ち着きなく室内を見回していた。
 亮登は勝てる喧嘩をしにきたと言わんばかりに偉そうに仰け反って、態度のデカいこと。
 どちらにしても、俺を呆れさせるのには十分だった。
 頼りねぇ〜コイツら。
「この写真の人物……分かりますか?」
 教頭はすぐに本題に入った。校長の手元にあった写真を亮登と天空にいばって見せ付けている。教頭は二人が男の方が俺であると証言するとでも思ってるだろうけど、亮登が間違うわけがない。
「あ! アイリちゃんだ。やっぱりカワイイねぇ〜w」
「でも、今より若そう」
「今でも若いだろ。幼いんだよ」
「あ、そうか」
 誰もそこでボケろとは言ってない。教頭もイラついた表情をして、
「男の方は、誰ですか?」
 イラついた声を出した。
「男……男には興味な――」
「……亮登」
 呼べと言ったのはお前だぞ。何だ、その態度は。
 俺は怒りの混じった声でとぼけた幼馴染みの名を呼んだ。
「とまぁ、冗談はさておき……男の方でしょ? これ、どうみても……」
「ヒロだ!」
 …………。
 あの……天空さん? 今、何つーた?
「同一人物」
 と、天空は写真の男と俺を交互に指差す。
「だっ……黙れ! 天空は黙ってろ!」
「ほらみなさい。やっぱりキミじゃないか! 校長、こうなったら強制退学を――」
「違うって言ってんじゃん!!」
 話が益々突拍子もない方向に行ってしまうじゃないか。退学目前!?
「仕方ないかな〜。ソラが勘違いするのは」
 慌てふためく俺とは打って変わって、亮登は気持ち悪いほど落ち着いていた。
「とまぁ、紘貴……吉武の父親を見たことのない人は間違えますね。でも、写真に写ってる男はここにいる吉武ではなく、吉武の父親です」
「そう、言い切れる根拠は?」
 校長の穏やかな声。質問には重みが感じられる。が、亮登にとっては有利なものだった。
「十八年もお向かいさんやってるんですよ。父子家庭だった吉武とオレは兄弟のように育ったも同然。吉武家のことなら大体なんでも知っている! 写真の女の子は八月にオヤジさんが再婚した人だし、紘貴の継母。ま、十六歳なのは確かだけど。つーか、かわいいよな、アイリちゃんw」
 何だか締まらないな、それ。
「そう言っても、それが真実でも、校内ではものすごいウワサになってるでしょ! そんな生徒を学校に置いておくわけには……」
 相変わらずの教頭。
「それはヒドくない? 無実の罪を押し付けて、潔白を証明しても退学させようっての? これって名誉棄損かなぁ。教育委員会に訴えればいいんだっけ?」
 亮登の正論なのか脅しなのか不明な発言に教頭はさっと顔を青くした。
 そりゃ、散々退学、退学と一人で騒いでたようなもんだし。
「とりあえずウチの母ちゃんも呼んでみてよ。それなら文句言えないよね? 退学だなんて、二度と言わせないよ」
 亮登は素早く携帯で自宅に電話を掛け始めた。
「杉山! 学校で携帯は……」
「硬いこと言うなって……あ、もしもし? オレ。すぐ学校に来れない? ……校長室」
『あんたぁー! 何やったの――!!』
 こっちにまで聞こえてくるほどの亮登母の声。
「何もやってないって。オレじゃなくて、紘貴がちょっと……」
 それから少し会話をした亮登は携帯を閉じてポケットにしまおうとしたが……、
「今日の授業が終わるまで、没収」
「うわぁぁ!! カンベンしてくださいっ!!」
 担任に奪われていた。

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2008.05.07 UP