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パニ・ハプ文化祭〜準備編
「あのさ……十一月の二、三にウチの学校で文化祭があるんだけど……。まぁ、二日は学校の生徒だけので、一般のは三日なんだけどさ……来ないか?」
――吉武家リビングにて。
彼女は俺の顔をじっと見ながら、目を瞬かせた。
何か、不思議に思われるようなことでも言ったか? なんて疑問も抱きつつ、更にオススメでもないポイントまで喋り出す俺。
「ウチのクラス、仮装喫茶やるんだ。最初は亮登がメイド喫茶がいいとか抜かしやがって、大変なことになったけど……」
彼女は首を傾げた。
おい、何だよその態度は! 対応に困るって。
「まぁ……ステージで劇とか合唱とか……ああ、つまんないね、そういうの。えっと……」
他に何かあったか? 特にないんだけどなぁ。たかが高校の文化祭だし……大学みたいに芸能人とか呼ぶわけでもない。特に楽しくもないか……。
「ごめんなさい。せっかくのお誘いですけど……」
……俺、何を必死になってたんだろ。
しかし、そこまで言ったのにあっさり断られると気分が悪い。
「いいじゃん。この先も行くことないだろ? 俺も三年だから今年で最後だし」
「……でも……」
何が不満だ、このやろう。一緒に行くのが俺だとイヤなのか?
益々カチンだよ。
「今、行かないって言っても、後から亮登が来るぞ、絶対」
「……やっぱり、ですか?」
「うん。アイツなら来る」
愛里は困った顔をして考え出してしまった。
そんなに都合が悪いのか? だったらそう言えばこっちだって諦めるのに……何で、こっちを必死にさせるような言い方をしやがる。
いや、必死にさせる言い方をされてるんじゃなくて、俺が勝手に必死になってんのか?
――何でっ!!
「あーいや、すまん。行きたくないならそれでいい」
押し付けちゃダメだ。ダメ、ダメ。
「アイリちゃ〜ん」
……早速、来やがったか。亮登よ。
玄関のドアが開いたかと思ったら、「おじゃましま〜す」と一応言って、勝手に入ってきた。まず台所を覘き、そしてリビングに顔を出す。愛里の姿を見つけてパッと笑顔になる。
リビングの入り口に立ってる俺を邪魔だと言わんばかりに突き飛ばす。その勢いで俺は壁に激突。痛む顔を押さえながら亮登の方へ向き直り、文句でも言ってやろうと思ったが、そこにはもう亮登の姿はなかった。すでに愛里が腰掛けるソファーの隣に図々しく脚を組んで座っていた。
――このやろ……。
「アイリちゃん。実は十一月……」
「三日に学校の文化祭があって、それに誘いに来たんですよね?」
思ったより、彼女の対応は素早かった。
「え? あ、そうなんだけど……」
あの亮登を黙らせた!?
「紘貴くんにたった今、聞きました。でも……」
この様子だと、愛里は黙りそうだ。
すかさずそこに俺が入る。
「行かないってさ。残念だったね〜亮登ちゃん」
「…………」
亮登は計算外な展開に言葉を失い、うなだれ、ソファーから立って、よたよたと帰っていった。
「仮装喫茶でホストもどきやろうと思ったのに……」
と言い残して。
あ、仮装……どうしよう。
とりあえず、みんながどんな仮装をするか聞いてみてから考えた方がよさそうだな。
どうせ何も思い浮かばないし。
ということで、次の日から参考のために仮装調査(?)を開始した。
「いや、まだ決めてない」
――やっぱり?
「とりあえず、学ランにしてみようかと……。ココ、ブレザーだし」
――学ランか。でもなぁ……。
「それ。悩んでんだよね、オレも。吉武はどうする?」
――どうするって、俺が聞いてんのに。
「演劇部にきぐるみがあったから、それ予約してきた」
――演劇部から借りるのもアリだったよなー。
「ねぇちゃんに相談したら、女装って言われてさぁ……」
――やめとけ。
まだまだ、参考にはなりそうにない。
後ろから肩を叩かれたのでそちらに振り向くと、
「私にも聞いてよ」
響咲良が笑顔で立っていた。
いや、この調査は男子限定でいいんだけど。
まぁ、聞けというのなら聞いてやらんこともないが……。
「どんな仮装すんの?」
「セーラー服」
これがまた、ものすごい笑顔だった。
「…………。へぇ…………そぅ」
もう、どんな反応をしていいのか分からず、そう言うのが精一杯だった。
「吉武は決まった?」
「全然。参考にしようと思って聞いて回ったけど、ダメだ」
俺から溜め息が漏れた。
すると響は手を鳴らして合わせた。
「うん。吉武はスーツでいいと思うよ。背も高いし、パリッとキマると思うんだ」
……制服とたいして変わらない気もするんだけど。
それに、亮登のホストもどきとネタが被る気もする。
「ね? お父さんのスーツ借りてきたらいいじゃん」
それはそれで楽だと思うけど、納得しかねます。
だけど他に何もないし……。
「……考えとく」
としか言いようがない。
学校が終わって家に帰り、父が帰宅した時に一応聞いてみたのだが……。
「仮装喫茶でスーツ? ……イマイチだな」
別の手を考えるしかないと思った。
「せっかくの仮装なのに普通すぎる。それは仮装じゃないと思う」
「そりゃまぁ、毎日着てる父さんから言えば、普通すぎるだろうよ」
「仮装らしくもっと……そうだ。燕尾にしたら? 目立つよ〜」
「目立つ気はねぇ! 燕尾じゃなくていいから、スーツ一式貸してくれ」
「え〜、イヤだ〜。燕尾なら貸すけど〜」
「いらん!」
これは困った。本当にマズいぞ。
さて、どうなる……俺の仮装。
文化祭当日まで、あと――。
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2008.03.21 UP
2009.07.24 改稿