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パニ・ハプ文化祭〜討論編
十月半ばに差し掛かりまして、ごく一部、推薦だのなんだのってピリピリしてる生徒がいる中、高校生活最後の文化祭を猛烈に楽しみにしていたりもする訳だ。
我がクラスは教室での出し物権を無事ゲット。
いやだって、ステージとかになると、色々と面倒だし。
ということで、その出し物を何にするか、というのがこれから討論される。
しかしそれで、とんでもない方向へ話が展開するなんて、誰が予想したと思う?
そてもこれも……幼馴染みAのせいだと思う。思ってやる。呪ってやる。
「では、何か案はありませんか?」
クラス委員の男子は司会進行役。女子はチョークを持って黒板に、いつでも書ける準備をしていた。
個人でいきなり案が出るはずもなく、前後左右の人と相談する話し声に教室は包まれた。
「はいっ!」
挙手する一人の男子生徒がそれを一瞬で黙らせる。
「じゃ、杉山くん」
「メイド喫茶!」
待たんかい、コラ!
突拍子もない亮登の発言で、男子は盛り上がった。
「いいじゃん。メイド喫茶!」
「おかえりなさいませ、ご主人様! 言われてぇ〜」
「萌えだ、もえ〜」
そんなことで黙ってる女子ではなかった。
「なんでメイド喫茶なのよ! アンタら男子が楽したいだけじゃない!」
「そーだ、そーだー!」
男子へブーイング。
話し合いのはずが、男子VS女子の口論になっている。
一人、冷静な女子が黙って手を上げ、立ち上がった。それも椅子の上に。
「だったらさぁ……メイド&執事喫茶にしたらいいじゃない」
さすがに……これは……。
「そうよ、それよ!」
「な、なんだとぉ!?」
「そうよ! わたしたちだけ恥ずかしい思いはしたくないもの!」
「バカなことを言うな!」
「おかえりなさいませ、お嬢様!」
「うわ、言いたくねぇ!」
「こっちだって言いたくないわよ!」
ギャーギャー、ワーワーと、教室内は大騒ぎ。
それに参加しない俺は、外――雲の浮かぶ青空を見ながら溜め息をついていた。
口論は収まらず、他に案もなく……。
「では、我がクラスの出し物は、メイド&執事喫茶ということで、実行委員に報告しときます」
やめてくれ! それはイヤだ!
だいたい、クラスの出し物なんだから、全員がそれをやることになるんだぞ! 分かってんのかクラス委員! それでいいのかクラス委員! 止めることができるのはクラス委員だけだぞ!
俺は必死に他の案を考えたが、余計に焦って何も出ない。
出てこないうちにこの話し合いは終わってしまい……クラス委員は実行委員会議へと出席すべく退場。
「杉山が変なこと言うからだ!」
「え!? オレのせい?」
メイド&執事喫茶に決まりながらも、誰も納得していないらしく、発案者への八つ当たりが開始された。
そうだ。亮登のせいだ。
――次の日。
クラスメイトほぼ全員から叩かれまくった亮登は、テンションイマイチ。珍しく静かだった。
ホームルームが始まる前、クラス委員から文化祭の出し物についての最終決定が発表された。
「残念ながら、メイド&執事喫茶は、衣装の調達が困難ということで、仮装喫茶に変更ということになりました」
俺は心の中で思わずガッツポーズした。
よし。これであの恥ずかしいセリフを客に向かって吐かずにすむぞ。
おかえりなさいませ、お嬢様――なんてセリフ、死んでも言いたくないわ。
メイドのみ期待していた亮登は……クラス委員の言葉を聞き、あからさまにがっかりした様子を見せた。
「仮装は自由。自前でも、演劇部の衣装レンタルでもオッケーです」
自由……と言われると余計に悩むじゃないか。何か、基準になるテーマがあれば考えやすいのに……。
意味もなく、授業中にまでそのことで悩んでしまう俺がいた。
まだ、ステージで劇だの合唱だのしてる方が悩まずに済んだかもしれない。
それもそれであまり好きな方ではないけど。
仮装喫茶は文化祭二日目。当日は四交代制となる。
……。せっかくの文化祭だし、俺ら三年は高校最後。
高校に進学してない愛里はこの先行くことはない。ということは、誘ってみるべきだよな。
誘わなくても亮登が強引に来る気がするけど。
帰ったら聞いてみよう。
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