7・エピローグ


 その後、直が表彰されたり、部室棟を建て直しがはじまったり、ボランティアサークルへの入会希望者が二十人を超えたり……。
 言うまでもなく、俺たちは逆転カップルとして、大学内で知らない人はいないぐらい有名になっていた。


「ただいま……」
「祐紀、夏休みにも帰ってこないで、何してたの……あ、お友達?」
「いや……」
 地元を嫌う理由、今思えばちっぽけなことだったと気付き、土日を利用して、実家に帰ってみた。もちろん、直を連れて。
「彼氏……一応……」
 そりゃ、ビックリだろうよ。ビラビラしたレースがたくさんついたスカートはいた、華奢な男連れて帰ってきたんだから……。俺は、やめろって言ったんだけどね。
 母さんは玄関先でばったり倒れちゃったよ……。


「はじめまして。鎌井直紀です」
 そんな笑顔で言っても、ウチの親父には通用しないと思うよ?
「祐紀……」
「はい?」
「交際するなとは言わないが……このナヨナヨした男だけは絶対に許さぁぁぁぁぁん!!」
 ブチキレた親父の十八番、ちゃぶ台返し炸裂! と思ったら、直が反射的に、ちゃぶ台返し返しをしてしまった……!
 ちゃぶ台が親父に襲い掛かり――ゴトゴンドゴン、と派手な音を立てて、親父を潰していった。

「……」
 口が半開きのまま、しばらく動けなかった。
 マ……マズイよ……。
「……すみません……つい……」
 オホホホホと笑って誤魔化してるけど、どうなっても知らないからな!
「……キサマ……私のちゃぶ台返しを返したのは、キミが初めてだよ。しかし、もうちょっと、男らしい格好はできんかね? 祐紀も、女らしい格好をしなさい」
 予想を反し、親父の機嫌は悪くなかった。
「今更、無理だよ」
「はーい、努力します。お父様」
「今の貴様にお父様と呼ばれたくないわー!」
 さすがにこれは気に入らなかったらしく、親父がちゃぶ台を持ち上げ、直に襲いかかった……。


「もしかして……」
「ん?」
「夏にお兄さんが来たとき」
「うん、名前でバレたらいけないから、黙らせた」
「……黙らせたって……じゃ、お母さんの電話のときも……」
「うん、名前で呼ぶから大声でかき消した」
「……やっぱり……抱こうとしたら腰引くのは?」
「無意識、っていうか、ついてるもの隠してたカンジ?」
「……地球外生命物体……」
「……どういうネーミングだよそれは……」
「何かの雑誌にそう書いてあったから……」
「まぁ、外見はともかく、生物学的には男と女なんだし、それでよしとしようじゃないか」
「男、嫌いだったのに……おかしいな……?」
「レズ……?」
「なんだとカマ野郎!」



 たくさんの出会いと別れがある。
 その中で、俺たちは出会い、愛しあった。

 辛い過去があってこその今。
 もう、この手は離さない……。




  **END?**
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