「Another Land」開設二周年記念 贈り物小説「ヘボラマンの奮闘」

 ヘボラマンは激しく困っていた。遠く離れた親しい友人である椿瀬誠さんの二年目の誕生日に。
 ヘボラマンは激しく困っていた。よくよく考えれば自分の一年目の誕生日にはわざわざイラストを描いてくださったということに。
 ヘボラマンは激しく困っていた。贈り物を、と言っても椿瀬さんと同じような絵なんて贈れないということに。
 ヘボラマンは激しく困っていた。だって、自分に画才がないんだもの。
 とりあえず、いろんなことにまとめて困っていたヘボラマンは、とりあえず何でもいいからやってみることにした。

 【パート1】
 何でもいいからやってみようと思った割には、全くもって何も思いつかない。とりあえず、プレゼントとは何かを考えてみた。
 
 プレゼント【present】
 [名](スル)贈り物。進物。また、贈り物をすること。「指輪を―する」――大辞泉より引用

 ……、何にも解決するわけがなかった。頭を抱えて、唸るヘボラマン。家族から変な目で見られたのは言うまでもない。

 【パート2】
 プレゼントとは何か、とかワケの分からないことを考えるから混乱するのだ。一定の結論に達したヘボラマンは、エセ創作家らしく何かを創ってプレゼントすることに決めた。だが、今度は何を創ればいいかで悩んだ。
 小説が一番楽である。何て言ったって自分の得意分野であるし、前回の二万ヒットのお祝いでも小説を贈った。なら、今回も小説か?
 しかし、よく考えれば二年目の誕生日である。ハッキリ言って、何をテーマとした小説を贈ればいいのか分からなかった。前回は上手く『二万』を利用したが、どう考えても『二年目』を利用できるテーマが思いつかない。むしろ、貧相な脳みそでそんなことを必死に考えるが故に、小説を書くのに必要なエネルギーをだいぶ消費してしまったような気がする。
 何かを創る。そんなに簡単なもんじゃない。
 とりあえず、もっかい頭を抱えてみた。たまたま隣にいた友人の視線が痛かった。

 【パート3】
 こんな短い間にパート3までくると、さすがにヘボラマンは参ってきた。ああ、贈り物ってこんなに苦労するんだ。
 いつも貰いっぱなしのヘボラマンはここにきてやっと頂き物の有り難さを理解した。ハッキリ言って遅すぎである。感謝の念のかけらすら感じられない以前までの彼の行動に、溜息どころかむしろ殺意が芽生える。
 そんなこんなで、詩でも書いてみることにした。昔に少しだけ詩の創作をやっていたので、それを何とか利用できたらと考えたのだ。苦し紛れの選択としか思いようがない。

 祝♪ 二周年♪
           作・ヘボラマン
 おめでとう おめでとう
 気がつけば、二年の歳月
 気がつけば、あなたは一歩前
 いつも世話になったあなたに
 心の底から感謝を贈ろう
 おめでとう おめでとう

 おめでとう おめでとう
 あっという間の、二年の歳月
 思い出すのは、これまでの日々
 鮮烈な出会いに迷惑メール
 あの時のことは今でも赤面ものさ
 あめでとう おめでとう

 おめでとう おめでとう
 サイト続けて、二年の歳月
 よくまぁ続いた、二年の歳月
 飽きたら消えるサイトの数々
 連絡取れぬ相互の皆様
 それでもあなたはいつも私と
 おめでとう おめでとう

 おめでとう おめでとう
 これからもヨロシク
 いつまでもナカヨク
 おめでとう おめでとう おめでとう


 ……バカらしくて書いた紙を破り捨てる。どうやら、詩の才能はかけらもなかったようだ。

 【パート4】
 詩が駄目なら俳句か?
 所詮浅はかな思考回路しかもっていないヘボラマンはバカみたいにそんなことを思いついた。本当に可哀想なやつである。
 とりあえず、俳句について考える。尾崎放哉は「咳をしても一人」みたいな強烈な俳句を作った。ならば、自分もそんな俳句を作ったらいいんじゃないか? そうすればなんか普通と違ってカッコイイ。
 完璧な初心者なくせに俳句のイロハをすっとばしてワケの分からないものを創ろうとしている点がすごい。だから初心者は恐いなとつくづく思う。
 テーマとしては『夏』に『祝い』。なんとも考え込んでなさそうなテーマである。

 暑い日の 七夕次の日 七月八日
      開設二年  椿瀬記念日

 短歌じゃねぇかorz……
 しかも、なんか見たことあるし。パクリか!?
 ああ、素人は恐いな。
 なんて、本気で思ったヘボラマンであった。

 【パート5】
 そろそろマジでネタ切れしてきて、本気で悩み出したヘボラマン。パソコンの前でうんうん唸る彼の周りには、ボツとなったネタの書かれた紙が見事散乱している。その内、五割が『へのへのもへじ』と意味不明な絵しか描かれていないのは恐らく今年の梅雨の晴れ間のような確率で起こった完全な偶発的なものであると信じたい。
 気がつけば時刻はトゥモローで、上瞼の下瞼がまさに強力磁石のS極とN極のように引き合っている。彦星と織り姫が前日、劇的な再会をしたときのように、瞼もどうやら再会を求めているらしい。こんにゃろ、毎日会ってるじゃねぇか。とりあえず、なかなかピンチな状況だ。
 よくよく考えれば普通にオメデトウと言い、普通に祝福してあげるのが一番ではないのか、と考えたのはそのピンチな状況と自覚してから一時間後で、時計の針はおよそ十二時間後、丁度学校で午後の授業が始まるの時刻であったことはここらの秘密だ。

 てなわけで、椿瀬誠様。「Another Land」開設二周年、オメデトウございます!
 これからも、是非ともガンガン愉快な小説を大量生産してください!
 ではでは、ここいらでこの馬鹿テキストを終わらせて頂きます。
 では、失礼っ!


 【終幕】
 ぱたんとノートパソコンを閉じる。よくまぁ、あれだけの時間をかけて、結局のところあんなしょぼい文で終わらせてしまうとは。ヘボラマンにはつくづく感心の念しかない。そろそろ脳天をかち割ってその中身を確認したいくらいである。
 怠け者のweb小説家の限界を見事に実演してくれた彼に、心からの拍手を送りたいのだが、残念ながらそんなことをしてもエネルギーの無意味な消費にしか繋がらないのでやめておくとしよう。
 とりあえず、椿瀬誠さんの二年目の誕生日の贈り物は、ここいらでようやく完成したのであった。


 ――あとがき――
 とりあえず、気にしないでください。
 とりあえず、おめでとうございます。
 とりあえず、縁を切ろうとか思わないでください。これ、マジです。
 では。

 NOVEL HEBORAMAN管理人「ヘボラマン」 2006年7月8日


お忙しい中、ありがとうございました。
かなりリアルで楽しかったです。
こっちが色々と贈りつけているのも負担になっているようなので……(たぶん)自粛します。たぶん、たぶん……。