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小ネタ劇場2 「パパって呼んで!」
「ヒロくーん。パパですよー」
「……ぱ」
「そうそう。パ、パ」
「ぱ!」
「おしい、もうちょっとだ。パ、パ」
最愛の息子に「パパ」と呼ばれる日を夢見て、僕はただひたすら「パパ」という単語を必死に教え込んでいた。
あ、いかん、もうこんな時間だ。
お向かいの杉山さんちにヒロくんを預け、自転車をこいで向かうのは自動車学校。ただ今、運転免許取得のため、自動車学校に通っている。
学校に行っている間は杉山さんにヒロくんを見て貰って、反対に結さんが買い物に行くときは僕が亮登を見ている。
自動車学校が終わって帰ると、ちょうど夕飯の時間。
杉山さんちのチャイムを押そうとしたら、ガレージに車が入る。春斗さんが仕事を終えて帰ってきたようだ。
「お帰りなさい」
「裕昭くんいらっしゃい。これから学校?」
「いえ、迎えに来たところです」
春斗さんと一緒に杉山邸に入り、僕の姿を見て満面の笑顔で飛びついてくる紘貴。抱き上げて顔をすりすり。
「ただいま、ヒロくーん。いい子にしてたかなー?」
「おとー、おとー」
……はい?
「なんて言ったよ、今」
ヒロくんの顔をのぞきこむ。僕を指差し、言った。
「おとー、おとー」
僕の心にビシッと音をたててヒビが入った。
食事の準備をしている結さんが台所から顔を出した。
「すごいでしょ。教えたらすぐ覚えてちゃった」
「ぱ、パパだよ、パパって言ってよ」
「おとー」
「違うよ、パパだよ」
「おとー」
「パパだってばー!!!」
いつものように、夕飯を杉山家でいただいた。
「ごめんね、余計なことしちゃって」
「散々パパって教えたのに覚えなかったんです。パパって言いたくなかったんですよ、ヒロくん」
慣れないビールを自棄になって飲んでだ。
次の日、二日酔いで動けなかった。
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2008.08.29 UP