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  小ネタ劇場  「昼間のパパはちょっと違う編」


 駅の近くに大きな店舗を構えるとある電器店。
 彼女と一緒に店内を歩いていると、あちらこちらの店員から、声を掛けられる。

「あれ? 部長、今日休みでしたっけ?」

「あ、部長、その人が例の奥さんですか?」

 などなど。とりあえず、笑顔でかわしつつ、父を探す。
 吉武裕昭、知らぬ間に部長にまで昇進。久しぶりに来て驚いた。
 しかし、そんなに似てるかな、俺。


 しばらく店内を歩き回ると、ようやく父を発見。あちらも俺たちに気づき、普段は見せない迷惑そうな顔をした。
「仕事中は来るなって、言ってあるよね?」
「うん、分かってる」
「……まさか、向こうで使うドラム洗濯機買えとか言わないよね?」
「違うよ。今日は咲良が……パソコン買うって」
 俺はただの付き添いなのだ。
「だったら他の店行けよ」
 いや、そういう訳にもいかんだろ。
「私が無理にお願いしたんです、すみません」
「……はいはい、パソコンね」
 しぶしぶ、といった様子で営業をはじめた。
「どんなのがいいの?」
「レポート書くのに使おうと、あと、ネットもできたら、他、何か出来ますか?」
「いろいろ」
 …………。
 なに、その、やる気のない即答返事。
「ノート? デスクトップ?」
「ノートで……」
「メモリは?」
「え?」
「容量は?」
「え?」
「ウイン? マック?」
「ちょ、父さん?!」
「無線ラン、オフィスあり」
「えっえっ??」
「15.6のワイド、インテルペンティアムプロセッサB950、メモリ4ギガ、ハードディスク640ギガ、最近出たモデルでいいね。当社指定のブロードバンド新規加入で3万円割引できるけど」
 ちゃっかり、パソコンの仕様説明。そのパソコンの店頭価格は8万9800円。
「いや。向こうで使うから……」
「あ、そう。じゃ……898……848、8万4800円かな」
 さっさと値引きもしている。
「予算は?」
「10万までで」
「あー、じゃあお買い上げね」
「あ、はい、お願いします」
「5年保証、おつけしますか? 購入価格の5パーセントで加入できますが」
「お願いします」
「下取りはいいですか?」
 機嫌悪いかと思えば、突然営業顔に戻るし、意味わからん。
「では、あちらのサービスカウンターへお願いします」

 何やらいろいろ書いてる間にパソコンの箱がやってきて、なにやら打ち込んで、お支払いして、
「はい、こちらが5年の保証書になります。メーカー保証書と一緒に保管して、修理の際は一緒にお持ちください」

 仕事中に接客対応する父を見たのは初めてで、何だかかっこよく見えた。
 ようやく説明も終わり、俺がパソコンの箱を持つとカウンター向こうの父が立ち上がる。

「ありがとうございました。でもできれば、仕事中には来ないでね」

 ……やっぱり、怒ってた?



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2008.08.29 UP