TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編4】彼女は中学2年生☆【11】


  ■11−愛里


 十八回目の春。連休に家族でショッピングモールに買い物に来た。
 あたしは一月に産まれた娘、優里を抱いてショーウインドーを見ながら裕昭さんたちが戻ってくるのを待っていた。
 すると、すれ違った人に声を掛けられた。
「愛里?」
 あたしには名前で呼ばれるほど親しい人はいないはずだけど、無視するのはよくないので振り向いてみる。少し驚いた表情の中学の同級生。あの頃の面影を残しつつ女性らしくなっている。
「千尋、ちゃん?」
 千尋ちゃんは笑顔になって大きく頷く。そして、あたしの側に駆け寄ってきた。
「久しぶりだね、元気だった」
「うん、元気だったよ。千尋ちゃんも、元気そうだね」
 彼女の視線はすぐに腕に抱いている我が子へ。
「いつ結婚したの」
「十六歳のとき」
「うそっ!知らなかった」
「誰にも言ってないもん」
「私が高校行ってる間に結婚して、ママになって……」
「もう一人、息子がいるのよ」
 と、あたしは笑った。あたしは、裕昭さんと紘貴くんがこちらに来るの姿をとらえている。
「愛里、買い過ぎだと言ってやれ!」
 荷物をいっぱい持たされている紘貴くんは、千尋ちゃんとあたしの距離と視線に気づいた。
「友達?」
「うん、中学の同級生」
「こんにちは、この人が愛里の旦那さん?」
 紘貴は横に首を振る。あたしは、やっぱり間違えた、とおかしくなり、笑いを堪えながら紹介した。
「違うよ、この人は二歳年上の息子、なんだよ」
「戸籍上はそうなるけど、それは言うな」  あたしに息子扱いされるのは、今だにイヤで、やはり認めたくないようだ。
「じゃ、旦那さんって……」
 千尋ちゃんは裕昭さん、紘貴くん、あたしの顔を交互に見ている。結論は出てるはずだけど、視野に入る情報と一致しないのだろう。
 あたしの二歳年上の息子をもつ、あたしのだんなさま。
 全然年齢を感じさせない容姿の裕昭さん。紘貴くんと並んでも、兄弟で通用しそう。
「これでも三十九歳のオッサン……」
 紘貴くんが裕昭さんをからかうように言う。
「オッサン言うな。誰が三十九だ、僕は永遠に二十代だ」
「いい歳して現実逃避かよ……」
 そんな逆転親子のやりとりがおかしくて、千尋ちゃんとあたしは笑った。

「でも、幸せそうでよかった」
 千尋ちゃんが聞き逃しそうな声で言ったから、反射的に聞き返した。
「え?」
 千尋ちゃんと目が合ったけど、彼女から逸らした。
「愛里を助けてあげられなかったこと、ずっと後悔してたから……」
 あたしが千尋ちゃんのためにと思ってやったことが、ずっと……。
「いいんだよ。あたしも、一緒に居ないほうがいいんだと思って言ったんだよ。それに、そういうことがあったから、裕昭さんに出会えたんだよ」

 悪いことばかりじゃなかったよ。
 あたしは、幸せになれたんだよ。


 まだ話したいことがたくさんあったけど、互いに予定もあって、その日は別れることになったから、千尋ちゃんと携帯の番号やアドレスを赤外線通信で交換した。
「今度、うちに遊びに来て」
「ええ、ぜひ」

 姿が見えなくなるまで手を振った。


 メールや電話でこれまでのことをたくさん伝えた。
 あたしの大切な友達に……。


   【終わり】

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2012.01.10 UP