■TOP > 義理の母は16歳☆ > 【番外編1】606日〜お父さんは18歳〜【13】
【13】
元旦。八〇年代最後の年になった。
年が変わっても、僕と貴子さんの関係は相変わらず……不満はなかったが、まだ早いと決めつけて、進むきっかけをつかめずにいた。
その日も早くからアパートに行き、昼ごろ近くの神社で初詣。薄暗くなりはじめたら帰らなければならない。
貴子さんは明日からまた四日間仕事、電話は六時。金曜日は休みだから、会いに行った。
土曜日、昭和というひとつの時代が終わった。
この日から四日間の仕事は珍しく、夜勤じゃなく日勤だった。
日曜日、平成という元号に変わったこと以外、なにも変わらない日。
月曜日は始業式で、三学期が始まったが、姉はまだ家でごろごろしていて、毎日のように母に怒られていた。
「新年早々、どこが面接受け付けてんだか」
と、それらしい言い訳もしていた。十二月三十一日までは「忙しい年末に……」だったけど。
十五日の成人の日、スーツを着て成人式に出掛けた姉は、三日経っても一週間経っても帰ってこなかった。また放浪の旅に出たのだろう。
十六日は月曜日だが振替休日。朝、夜勤を終えた貴子さんと一緒に過ごした。
日曜日にも貴子さんと休みが合って、一緒に過ごした。
一緒にいられることが嬉しいことに変わりなかったが、もどかしさが増していく。
なのに、踏み込めない臆病な僕。
生まれて初めて女の人からチョコレートを貰ったバレンタイン。
ギリギリで突破した学年末テスト。
お返しに悩んだホワイトデー。
高校二年生が終わった。
新年度になると消費税が導入され、値札の金額では物が買えなくなった。
無事に高校三年になって、携帯ゲーム機が発売されたが、日頃の電話代のせいで買えなくて、少々悔しい思いをしたが、持ってるやつも電池代に嘆いていた。
それからゴールデンウイークが過ぎ、梅雨がきて、明けたら暑い夏になった。
日も長くなり、貴子さんが日勤の日でもアパートに行くようになり、帰宅はだいたい午後八時過ぎ。母の説教を「はいはい」で聞き流す毎日。
学校では、徐々に三年――受験生の自覚を持ちはじめる者も出てきて、何て気が早いんだなんて他人事のように見ている自分。頭はよくないし、勉強は嫌いだから、受験勉強はしないでいいし、就職にしたって、まだ七月。全然、大丈夫だ。
……セミが、うっとうしく鳴いている。
あっという間に夏休みになった。
奥手な僕が、大人の領域に、踏み込んだ。
大人の秘密を知った僕は、狂ったように没頭した。
それが、言葉以外に想いを伝える方法だとも知った。
言葉だけでも、身体だけでも伝えきれないほどの想い。
――会うたびに求めあった。
故の、過ち。
僕は、彼女がそれらしい話をするまで、気付かなかった。
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2012.02.09 UP